日本郵政(西川善文社長)が内定した官僚・公社出身3氏を含む郵政民営化4社の最高執行責任者(COO)の肩書を「社長」としたことが、金融界などで波紋を呼んでいる。小泉政権の任期切れが迫り、郵政改革機運が後退する中、「今回の社長人事で郵政民営化は官僚主導色が強まる」(大手行幹部)と見ているためだ。
4社の社長職には当初、民間から招いた古川洽次(こうじ)ゆうちょ銀行最高経営責任者(CEO、元三菱商事副社長)らCEO4氏が就き、名実ともにトップを名乗ると見られていた。それが一転し、名誉職的なイメージもつきまとう「会長」となった。
しかも、7月31日に政府に提出した民営化後の経営計画には、CEO4氏が策定に全く関与しなかった。それとは対照的に、保険業界出身で郵便局会社社長となる寺阪元之氏を除く官僚・公社出身3氏は「策定の中心的な役割を務めた」(関係筋)という。また、元金融庁長官の高木祥吉・日本郵政副社長をゆうちょ銀行社長に、元郵政事業庁長官の団宏明・同副社長を郵便事業会社社長に充てたことには「民営化後の主導権争いをにらんだ出身官庁の強い後押しがあったのでは」(自民党幹部)と注目されている。【森有正】
【郵便局株式会社】
寺阪元之氏(てらさか・もとゆき)京大理卒、69年住友生命保険入社。専務などを経て04年4月からスミセイ損害保険社長。59歳。
【ゆうちょ銀行】
高木祥吉氏(たかぎ・しょうきち)東大法卒、71年大蔵省(現財務省)入省。金融庁長官などを経て、06年6月から日本郵政副社長。58歳。
【郵便事業会社】
団宏明氏(だん・ひろあき)東大法卒、70年郵政省(現総務省)入省。郵政事業庁長官を経て06年6月から日本郵政副社長。58歳。
【かんぽ生命】
山下泉(やました・いずみ)東大経卒。71年日本銀行入行。金融市場局長などを経て、05年4月から日本郵政公社総裁代理。58歳。
毎日新聞 2006年8月1日