防災:ジャワ中部地震 日本が耐震建築技術を大工に伝授
【ジャカルタ井田純】5000人以上の死者を出したインドネシア・ジャワ島中部地震。発生から3カ月がたった被災地ジョクジャカルタでは、日本の支援で、耐震建築技術を地元の大工たちに伝える試みが進められている。
5月27日の地震(マグニチュード6.3)では、ジョクジャカルタ特別州、中部ジャワ州あわせて住宅約34万戸が全壊した。日本の同規模の地震に比べると極めて大きな被害で、耐震性の低い家屋構造が多数の死傷者を生んだことを示している。
こうした悲劇を繰り返さないために、ジョクジャカルタにあるインドネシア・イスラム大学地震工学センターでは、耐震建築普及への取り組みを進めている。9月には、日本政府の資金協力のもとで、地元の大工らを対象に講習を開き、耐震建築技術を実地に指導する。現場レベルで技術を広めることで、これから本格化する被災地の住宅復興に生かすのが狙いだ。
講習には、国際協力機構(JICA)の専門家で、国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)の後藤哲郎・主任研究官(60)も協力。現地の住宅で使われているレンガ壁がどの程度の力に耐えられるか、などを装置を用いて実験し、鉄筋コンクリートを効果的に使うことで強度が増すことを実感してもらう。
インドネシアなど途上国の住宅構造に詳しい後藤研究官は「日本から最新技術を持ってきても、実際に使われなければ意味がない。現地で利用可能な建材を使い、大工さんたちが自ら取り組むようにする必要がある」と話す。
後藤研究官によると、インドネシアで一般に使われているレンガは、焼成工程で温度の上がらないもみ殻を燃料にしていることなどから、もともと強度が弱い。それでも、鉄筋コンクリート枠で適切に補強すれば2~3割の強度の向上が見込めるという。講習では、こうした技術を応用した住宅を最大被災地のバントゥル県とクラテン県に建設し、耐震モデルハウスとして活用する計画だ。
地震多発国にもかかわらず、インドネシアでこれまで耐震建築物が普及しなかった背景には、建築コストを抑えようという経済的理由に加えて、建築基準が守られていないことが大きい。
日イ防災共同委員会を通じた防災協力を行っている国土交通省の岡崎敦夫・国際基準調査官は「ニュージーランドをモデルにした建築基準が実情にあっていないうえ、基準を守らせる仕組みも乏しい」と指摘する。その上で「復興過程で、一定の建築基準を満たした住宅には公的支援を行う、などの行政側の取り組みも有効」と話している。
毎日新聞 2006年8月31日