自民党総裁選は8日告示されるが安倍晋三官房長官は報道各社の世論調査で「ポスト小泉」候補として一貫して高い支持を集め続け、このことが優位を固める原動力となった。小泉政権を経て、派閥の支持よりも選挙の顔になるか否かが党内での「総裁の条件」となった。世論調査が進むたびに対立候補はふるい落とされ、支持のなだれ現象が起きたというのが実態だった。
安倍氏は毎日新聞が今年4~7月に行った計4回の調査(いずれも電話)を含め一貫して支持を伸ばし続けている。今回は面接調査のため単純比較はできないが支持は拡大基調にあり、人気度で独走状態が続く。
ただ、今年4月の時点では安倍氏(36%)を福田康夫元官房長官(18%)が18ポイント差で追撃していた。福田氏は小泉政権で停滞するアジア外交をめぐり活発に発言する一方で、出馬については語らぬ戦術で逆に注目を集め、5月調査では支持が20%に達していた。
しかし、6月調査で福田氏の支持の伸びは頭打ちとなり、おおむね各社の調査でも同様の傾向を示した。自民党内では福田氏の「黙秘戦術」の限界を指摘する声が強まり、安倍氏は出馬意欲を明確化。森派と中堅・若手議員に支持が拡大する中、福田氏は不出馬に追い込まれた。
福田氏の出馬辞退後は麻生太郎外相と谷垣禎一財務相にどう支持が分散するかが焦点だったが、今回の調査結果を見る限りむしろ安倍氏の独走が強まっている。世論支持と党内支持が相乗効果で増幅した形だ。
世論の支持が総裁選レースに事実上大きな影響力を持つとみられる状況について、小林良彰・慶大教授(政治学)は「日本のリーダーとなる自民党総裁が、議員や党員だけでなく一般国民の意思で選ばれるのは悪いことではない」と評価する半面、「メディアへの露出度で支持が決まっている。候補者はもっと政策を発信すべきだ」と述べ、本格的な政策論争を経ずに候補が選別される傾向に警鐘を鳴らす。また、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「メディアと国民の間で(世論調査という)ボールを投げ合っているうちに、(安倍氏の)ボールがどんどん高くまで飛んだという感じだ」と今の状況を表現した。【三岡昭博、小山由宇】
毎日新聞 2006年9月8日