成年後見をめぐるトラブルで、新たに東京都内の司法書士が、契約を結んだ77歳女性から「報酬が法外だ」として、解任されていたことが分かった。定額報酬は月3万円だが、さまざまな加算をし、1年半で約500万円を受領していた。東京司法書士会などは「受任の趣旨を逸脱している」として女性への返金を指導したが、拒否したため、処分を検討している。司法書士は取材に「正当な報酬だ」と主張した。
この司法書士は、全国の司法書士らで作る社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」の元東京支部副支部長で、同制度の利用普及を推進していた。成年後見問題では既に元行政書士で社会保険労務士のリフォーム会社社長が財産返還などを求められ、警察に被害届が出ている。国家資格者による相次ぐトラブル発覚で、後見制度を所管する法務省などは早急な対応を迫られそうだ。
関係者によると、女性は都内で1人暮らしだった05年1月、司法書士と財産管理などの委任契約を結び、翌月、任意後見契約をした。契約では、3カ月ごとに財産の状況などを伝えることになっていたが、実行されないため、不審に思った女性が報告書を要求。同年末になって提出され、女性の預金から報酬として400万円以上が支払われていたことが分かった。
毎月の定額報酬に加え、不動産売買や福祉施設への入所手続きなどの報酬が計300万円以上あり、大半の業務に「30分5000円」の日当が加算されていた。今年7月に契約を解除したが、最終的に報酬総額は498万円に上った。
女性は8月、東京司法書士会に報酬返還を求めて調停を請求。同会とリーガルサポートは「高すぎる」と認定し、「不当な分」の返還を指導したが、拒否された。リーガルは近く、この司法書士を名簿から削除する方針で、司法書士会も処分の方向で検討している。
司法書士は「報酬額は契約書にあり、本人にも十分説明した」としている。一方、女性は「報酬は月3万円で、それ以外に報酬がかかるとは聞いていない」と話している。【成年後見取材班】
成年後見は、判断能力が衰えた高齢者らに代わって財産管理などを行い、生活を守るための制度。リーガルサポートはその担い手として99年に設立され、司法書士約3800人が参加している。【成年後見取材班】
毎日新聞 2006年9月14日