高齢女性2人と成年後見契約を結び、財産の返還などを求められている東京都内の訪問リフォーム会社社長が05年5月、所属する行政書士会から「廃業勧告」を受け、登録を抹消していたことが分かった。しかし同年9月に85歳の認知症女性と後見契約を結んだ際も、公正証書に「行政書士」と記し、今も肩書を使っている。専門家は虚偽記載と行政書士法違反に当たるとしている。
社長はもう一人の94歳女性と後見契約を結んだ直後、登録を抹消した。関係者によると「ふさわしくない行為」があったため、行政書士会の綱紀委員会が調査し、理事会で廃業勧告が決まった。
総務省によると、行政書士は国家資格に合格した後、日本行政書士会連合会の名簿に登録し、事務所を管轄する都道府県の行政書士会に入会しなければならない。登録していない者が行政書士を称することは、行政書士法で禁じられている。
女性の弁護士が1日に受け取った名刺に「行政書士」とあったため「登録がない」と指摘し、経緯をただしたが、社長は答えなかったという。
認知症女性との後見契約の公正証書を作成した公証人は「職業は口頭で確認し『行政書士』と書かれた名刺をもらった。契約時に行政書士でなかったことが事実とすれば、公正証書の不実記載に当たる」。日本行政書士会連合会は「今も行政書士を名乗って活動しているなら、何らかの対応を考えたい」としている。
社長は別に社会保険労務士の資格も持っており、この登録は継続している。【成年後見取材班】
毎日新聞 2006年9月5日