都心を約3万人の市民らが駆け抜けた。18日行われた東京マラソン。あいにく雨と寒さの中での大会となったが、大きな混乱はなく、沿道では約178万人がランナーに声援を送った。【木村健二、堀文彦、田村彰子】 ■スタート地点 スタート地点の東京都庁前。約600用意された仮設トイレには数十人単位の列ができた。川崎市の会社員、梅原麻里さん(31)は「空いているトイレを探して歩いた。スタートに間に合えばいいけど」と困惑した様子。 選手の荷物を預かるため約40台のトラックが用意された。荷物はゴールで選手に返す仕組みだが、ゼッケンで分けたトラックを探すのに手間取る人もいた。東京都府中市の会社員、藤本広樹さん(29)は「15分ぐらい探していたが、(荷物の)受付時間が過ぎてしまった」と話した。 ■浅草雷門 浅草雷門付近では、周囲約300メートルの三角地帯が、付近道路の規制のため、約5時間にわたって「陸の孤島」となった。和菓子店「亀十」では、規制解除までの売り上げが通常の約3割にとどまった。島田俊六社長は「浅草の宣伝にはなるので仕方ない」と話した。 同地区内に住む会社員、永田光広さん(46)は「車で出かける用事があったが、時間を遅らせた。ちょっと困るが、自宅で待機です」。住民らの多くは事前の広報もあってか、冷静に受け止めていた。 ■銀座 銀座4丁目交差点付近では、買い物客らで沿道に幾重にも人垣ができた。東京都立川市の主婦、稲田希久代さん(39)は息子2人とマラソン初出場の夫和久さん(42)を応援。長男純也君(10)は「かっこ良かった」と笑顔を見せた。 道路の規制は、ドライバーたちを悩ませた。品川の自宅から乗用車で来た男性会社員(58)は「どこも規制ばかりで遠回りをしたため、普段の倍の50分もかかった。でも多くの参加者があるイベントだから仕方ないですね」とあきらめ顔だった。 三越銀座店では普段なら正午には満車になる約200台収容の駐車場が、正午を過ぎてもわずか約20台。誘導係の男性(62)は「こんな閑散とした駐車場は初めて。ここまで少ないとは」と驚いていた。 ■ゴール地点 ゴールの東京ビッグサイト。初めてマラソンに挑んだ東京都小平市の会社員、岸由紀子さん(25)は「普段は車が通る道路を走れ、気持ちがよかった」と満足げだった。 制限時間(7時間)内の最終走者は、兵庫県芦屋市の堀内信弘さん(42)と真理さん(44)夫妻。真理さんは「中盤以降、足が棒のようになった。完走できてほっとした」と笑顔を見せた。 ◆出場記者のルポ 沿道を幾重にも取り囲む人たち、太鼓や管楽器などを使っての応援、そしてチアリーダーによる演技……。これまで首都圏や北海道、東北など約30のレースに出場してきたが、首都・東京を走るこの大会は、参加人数だけでなく、そのスケールの大きさが違った。 大会前は、実施主体となった行政や競技団体ばかりが目立ち、市民の顔は見えにくかった。しかし、レースになると違った。最初はおそるおそるランナーに水を差し出していたボランティアたちだが、レースも終盤になるにつれ、驚くほどの大声を出して応援した。「ランナーだけのお祭りにしてなるものか」という意気込みさえ感じた。 ただ、スタート前の荷物の預かり、ゴール後の荷物の受け渡しがスムーズにいかないなどの課題もあった。係員のマニュアル通りと思われる対応も気になった。しかし、初めから100点を求めるのは無理があろう。 歩道がなくなり、沿道の人波が切れる35キロ地点の手前。走っていて最も苦しくなる所だが、「甘いもの」をトレーに乗せた女性が「食べて行って」と呼びかけている姿にほっとした。こうした自発的な市民の試みこそが、大会の歴史を作っていくと感じた。 沿道の声援に励まされ、途中まで自己ベストを上回っていた私だが、終盤に失速、タイムは3時間25分2秒だった。【北村弘一・42歳】 ◆交通規制610カ所、渋滞は目立たず 警視庁は約5000人の警察官を動員して交通規制や雑踏警備に当たった。約610カ所で行われた交通規制は午後4時20分ごろには全面解除となり、規制は最も長い区間で約6時間半だった。目立った渋滞やトラブルはなかった。 また、東京消防庁は、21カ所に設置した救護所などに約600人の消防隊員や救急救命士を配置した。38キロ付近とゴール前で倒れた2人は、いずれも一時心肺停止状態だったが、配備していた自動体外式除細動器(AED)の活用で一命をとりとめたという。また、火災による消防車の出動や、大会と関係のない一般の救急出動にも影響はなかった。【曽田拓、佐々木洋】 毎日新聞 2007年2月18日 20時42分 (最終更新時間 2月18日 21時58分) |
東京マラソン:雨と寒さの中、3万人の市民ら駆け抜ける
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