松下電器産業が、子会社の日本ビクターの株式を米投資ファンドのTPG(旧テキサス・パシフィック・グループ)に売却する方向で最終調整に入ったことが16日、分かった。9日の入札でTPGが提示した条件が米投資ファンドのサーベラスを上回った模様だ。売却価格や再建計画など詰めの交渉を進め、今月中の合意を目指す。実現すれば、外資系ファンドによる日本の電機メーカーの初の大型買収となる。
松下はビクター株の52.4%を保有。ビクターの業績不振が続き、AV(音響・映像)分野での重複も多いことから売却の方針を固め、買収提案の入札を実施していた。
入札にはTPGとサーベラスが応札。入札価格や再建案など詳細は明らかになっていないが、1株当たりの買い取り価格は、TPGがサーベラスより高い価格を提示したという。松下は保有するビクター株をすべて売却する見通し。
TPGはビクターの全株式を買い取った後、新たに経営陣を送り込み、不採算部門から撤退するなどしてビクターの収益力を回復させる考え。非公開化後、企業価値を高め、再上場するか、他メーカーに売却するなどして投資を回収する方針。
TPGは今後3~5年の間に日本で毎年5億~10億ドルの投資を行うことを表明しており、今月6日には玩具大手のタカラトミーとの資本・事業提携を発表した。ビクター買収が日本での事実上初の大型買収案件となり、対日投資を本格化する方針だ。
松下は業績不振のビクターを連結対象から外し、グループ事業の再編の総仕上げとする。
ビクターは1927年創業の老舗で、54年に松下の傘下に入った。【田畑悦郎】
毎日新聞 2007年3月16日 10時39分