政府は、地球温暖化対策で温室効果ガス削減の数値目標を設定する方針に転換し、京都議定書後の国際的な枠組み作りに向けた新たな基準を提案する方針を固めた。スイスで来年1月に開かれる世界経済フォーラム年次会合(ダボス会議)で、福田康夫首相が表明する。新基準は、各国を「先進国」「新興国」「発展途上国」に分類し、各グループ別に中長期の温室効果ガス削減の数値目標を算出する。また、発展途上国の温暖化対策事業に、08年から5年間で総額100億ドル規模を支援する「資金メカニズム」の構築も表明する。
今月開かれた気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、欧州や発展途上国は温室効果ガスについて「2020年に25~40%」の中期削減目標を先進国に課す案を支持したが、日本は数値目標の設定自体に反発。「後ろ向き」との強い国際的な批判を浴びた。来年7月の北海道洞爺湖サミットを控え、危機感を強めた政府は、数値目標設定を認める姿勢に転換し、さらに新たな基準を自ら提案することで国際的な議論をリードする狙いだ。
数値目標設定に批判的な国内経済界の協力を得るため、「先進国」では各国の産業別に省エネ技術の進展度合いも加味して削減目標数値を算出し、それを積み上げて各国別の削減目標を出す「日本型新基準」を提唱する。この新基準に基づく日本独自の中長期的な削減目標数値は、洞爺湖サミットまでに表明する方針だ。グループ分けは、中国、インドを「新興国」として発展途上国から区分することで、削減義務を負わせる狙いもある。
資金メカニズムは、温暖化対策事業に対して低金利の円借款や国際協力銀行の特別融資などを幅広く活用した新たな支援策となる。外務、環境、財務、経済産業の各省幹部による運営委員会を首相官邸に設置。官房長官を含めた関係閣僚会議で支援対象国や内容を決める官邸主導型のシステムとする。インドネシア、ツバルとケニアやナイジェリアなどアフリカ数カ国を対象に先行実施する方針だ。5年100億ドル規模を想定して調整を進めており、1月中に最終確定する。【葛西大博、高山祐】