07年の円相場は米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に翻弄(ほんろう)された。年前半は日米金利差を背景に1ドル=120円台まで緩やかな円安・ドル高が進んだが、サブプライム問題が表面化した夏以降は急転換。11月には1ドル=110円を上回って円高が進んだ。その後も不安定な状態が続いており、市場では「来春には円高が再燃し、1ドル=100~105円台まで上昇する」(三菱東京UFJ銀行の高島修氏)との見方もある。【坂井隆之】
07年前半は日本と欧米との金利差が専らの関心となり、円はドルやユーロなど主要通貨に対し「独歩安」の展開となった。超低金利の円を借りて高金利通貨国に投資する「円キャリートレード」も円安に拍車をかけ、円相場は6月後半、約4年半ぶりの円安・ドル高水準となる1ドル=124円台まで下落した。対ユーロでも7月には1ユーロ=169円と、99年のユーロ導入以来の最安値を記録。円安は日本の輸出企業の収益を押し上げ、景気拡大を下支えした。
しかし、8月に仏金融大手のBNPパリバがサブプライム関連資産を運用するファンドの凍結を発表すると、様相は一変。欧米金融機関やファンドの資金繰り不安と米景気の先行き懸念が広がり、為替は円高・ドル安に急激に振れた。「円キャリートレード」の解消も加速し、円は11月下旬、約2年5カ月ぶりの円高・ドル安水準となる1ドル=107円台まで急騰した。シティグループなど米大手金融機関の巨額損失発表や米景気失速懸念の高まりで、市場では「投資家のドル資産離れ」もささやかれた。
12月には欧米の5中央銀行が協調して資金供給に踏みきり、年末にはサブプライム問題への懸念がやや後退。ドルが買い戻され、円相場は1ドル=113~114円台まで下落した。ただ、サブプライム問題の収束はまだ見通せないうえ、米景気失速懸念も消えておらず、市場にはドル売り圧力がくすぶっている。更に「来秋の大統領選を控え、米政府が輸出企業支援のドル安容認姿勢に傾く」との思惑もあり、円高再燃観測は根強い。