長く低迷していたフランスのオランド大統領の支持率が上昇に転じた。2014年末の支持率は第5共和制の歴代大統領のなかで最低水準に落ち込んだ。有権者が景気低迷、高い失業率、オランド氏の指導力の弱さを強く批判したためだ。だが、パリの週刊紙襲撃事件に対する厳しい対応で、支持率は突如として伸びた。これを当然だと考えてはならない。急務の経済改革を断行しない限り、いまの支持率を維持できないだろう。
オランド大統領(右)の発言に耳を傾ける議員ら(5日、パリ)=ロイター
オランド氏の運が上向いてきたことは、先週末にフランス東部であった議会の補欠選挙で、与党・社会党の候補が前評判を覆して勝利したことでわかる。対立候補をたてた極右の国民戦線は49%を得票したため、社会党にとってはほろ苦い勝利ではあった。国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が掲げる反移民のポピュリズム(大衆迎合主義)は既存の大政党にとって大きな脅威になりつつある。それでも、今回の結果は12年にオランド氏が大統領に就任した後では、補選における社会党の初めての勝利となった。
■週刊紙襲撃事件の対応で支持回復
パリで多数の犠牲者を出した事件に対するオランド氏の機敏な対応が、有権者の支持が回復しつつある大きな理由だ。フランスは事件によるショックで暗くなったが、オランド氏は冷静さを保ち、国家元首として期待される威厳と意志を示した。オランド氏は経済よりも安全保障の問題の方が得意にみえる機会がしばしばある。ウクライナ問題を巡る外交において、オランド氏はドイツのメルケル首相に主役の座を譲っているかもしれないが、舞台には立っている。キャメロン英首相に比べればましだ。
フランス経済の先行きは明るさを増しており、これから数カ月間ではオランド氏に有利な材料の一つになるかもしれない。欧州中央銀行(ECB)による量的緩和の開始、欧州単一通貨ユーロの下落、原油安はいずれもフランスの成長率を引き上げる要因になりそうだ。フランス中央銀行は9日、経済を巡る環境が好転していると認め、15年1~3月期の国内総生産(GDP)成長率の予測を0.1%から0.4%に上方修正した。
オランド政権にとっては経済改革策をまとめられるかどうかが試金石になる。大統領就任の1年目は左寄りの姿勢が目立ったものの、いまではバルス首相、マクロン経済相をはじめとする政権内部の改革派の意向を尊重している。政府は予算を削減し、煩雑な法人税の負担を一部軽減した。3月には、日曜日の営業などに関する幅広い分野で官僚主義を改める規制緩和に向けた法改正に乗り出すとみられている。