タカタの欠陥エアバッグに関連する事故が新たに発生した。1月に米テキサス州で起きた死亡事故を科学捜査を担う米現地当局は「原因はタカタ製エアバッグから飛び出た金属片」と結論づけた。正式リコール(回収・無償修理)の対象だけでも全世界で1500万台規模に上る。リコールの遅れは新たな事故につながりかねず、タカタや自動車メーカーは早期対応を徹底する必要がある。
米AP通信が2月9日、1月18日に起きた死亡事故の検視結果について報じた。異常破裂したのはホンダ「アコード」(2002年モデル)に搭載された運転席エアバッグ。同車種は11年、正式リコールの対象になっていたが、転売を重ねた中古車で未交換だった。
エアバッグの欠陥が原因とタカタなどが認めた死者は世界で3人。他の2人もホンダやタカタが「関連している可能性がある」として調査中だ。今回の事故も両社は「事実関係を調査中」で調査対象の死亡事故は計6件になった。新たな事故の発生でタカタ批判はさらに強まる可能性がある。
タカタの欠陥エアバッグ問題が大きな注目を集め始めたのは昨年秋。死亡事故をきっかけに米メディアが集中的に報道した。高まる世論の懸念を受け、米議会が11~12月に相次いで公聴会を開催してタカタやホンダの幹部らを召喚。米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)もリコール対象の大幅な拡大をタカタなどに要求した。
年明け以降は大きな動きがなかったが、新たな事故を機にフロリダ州の上院議員が先月末、リコール実施状況の情報開示をNHTSAに強く要請した。
リコールが遅れれば事故が増える可能性は高まる。だがタカタは交換部品の増産を進めるが、全台数の交換には数年単位の時間がかかる見通しだ。新たに事故を起こした車がリコール対象になってから3年以上が経過。リコールの周知が徹底できていれば未然に防げた可能性もあり、自動車各社のリコールへの姿勢も問われかねない。
タカタ製エアバッグ搭載の車は日本でもリコール対象になっている。国土交通省によると1月時点でリコールを実施できた車は全体の約6割にとどまる。
今回の事故が起きたエアバッグとは別に、自動車メーカーは不具合の原因究明ができていないエアバッグも調査目的でのリコールを実施中だ。調査目的のリコールを含めると対象は全世界で2600万台を超える。
原因究明のため、昨年12月に日米欧の自動車大手10社が共同調査に乗り出すと表明したが「まだ具体的に着手していない」(自動車大手幹部)状態。対応が遅れている印象は拭えない。リコールや調査の遅れは車メーカーにとって最大の資産であるはずの信頼にも影を落としかねないだけに、対応は急務だ。