【ミンスク=石川陽平】親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍の激しい戦闘が続く同国東部の危機打開へ、ドイツとフランス、ロシア、ウクライナの4カ国は11日、ベラルーシの首都ミンスクで首脳会談を開く。即時停戦の具体策で合意し、実行に移せるかが焦点。ミンスクでは11日も親ロ派を交えた最終調整が続く一方、親ロ派と政府軍がともに軍事的優位に立とうとウクライナ東部の戦闘をエスカレートさせている。
親ロシア派武装勢力との戦闘が激化するウクライナ東部を移動するウクライナ軍(10日)=ロイター
11日の4カ国首脳会談には、メルケル独首相とオランド仏大統領、プーチン・ロシア大統領、ポロシェンコ・ウクライナ大統領が出席する。即時停戦の条件を巡る対立で首脳会談の開催自体が危ぶまれるが、10日夜に東部を訪れたポロシェンコ氏は「ウクライナを守らなければならない」と述べ、出席する考えを改めて表明した。
東部危機を巡る首脳会談の開催は、8日の4カ国首脳による電話協議で決まった。危機が「全面戦争」に陥るとの危機感を強めた独仏首脳が5日夜にキエフを急きょ訪問。6日にはモスクワでプーチン大統領と会い、即時停戦と和平定着へ具体案を示して本格的な仲介に乗り出した。
首脳会談に向け、4カ国は9日、ベルリンで外務次官級の準備会合を開いた。10日夜にはウクライナ政府と親ロ派、欧州安保協力機構(OSCE)、ロシアの代表がミンスクで、即時停戦の具体案を巡ってぎりぎりの調整を継続。ロシア通信は11日、親ロ派とウクライナ政府の代表が停戦で暫定的に合意したと伝えた。
ファビウス仏外相によると、独仏が示した案は(1)即時停戦(2)兵力の引き離し(3)ウクライナとロシアの国境監視の強化(4)東部の親ロ派支配地域への「特別な地位」の付与――が柱。2014年9月にウクライナ政府と親ロ派代表が署名した、停戦を柱とする12項目の「ミンスク合意」を確実に履行させる内容だ。
ウクライナを支持する米国も10日、外交努力を強めた。オバマ米大統領がポロシェンコ、プーチン両大統領と電話で協議し、「政治的な解決」を要請。米国は首脳会談が不調に終われば、ウクライナへの武器供与や対ロ制裁の強化に踏み込むことを検討している。
4カ国首脳会談の開催を前に、親ロ派と政府軍はともに軍事行動を活発にしている。
10日には政府軍が支配するドネツク州クラマトルスクが砲撃され、市民ら10人以上が死亡した。親ロ派は交通の要衝デバリツェボで、何千人もの政府軍を包囲したとしている。これに対し、政府軍は10日、東南部のアゾフ海沿岸地域で攻勢に転じ、複数の町を奪回したと明らかにした。
親ロ派と政府軍は軍事的優位を確立し、双方の間の境界線の画定問題などで自らにより有利な条件を引き出そうとしている。11日の首脳会談で即時停戦に合意できなければ、親ロ派と政府軍の双方が総攻撃をしかけ、東部情勢が一気に悪化。ロシアが本格的な軍事介入に乗り出す恐れがある。
東部は親ロ派住民が多く、14年2月にキエフで起きた親欧米派による政変に反発が広がった。政府庁舎などを占拠した親ロ派武装勢力に対し、政府軍が4月に「対テロ作戦」を宣言。9月に「ミンスク合意」に達したものの、戦闘は収束しなかった。国連によると、東部の紛争で5300人以上が死亡した。親ロ派は東部地域の約3分の1を支配している。