【モスクワ=田中孝幸】ウクライナ東部では16日、政府軍と親ロシア派武装勢力による停戦の2日目を迎えた。ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国首脳がまとめた停戦合意では同日中に前線から重火器の撤去を始め、3月1日までに非武装の緩衝地帯を設ける計画だ。ただ、前線の一部では散発的に戦闘が続いており、作業が大幅に遅れる懸念も出ている。
緩衝地帯は幅50~140キロメートルで、政府軍は現在の親ロ派支配地域との境界線から、親ロ派は昨年9月の停戦ラインからそれぞれ重火器を同じ距離だけ撤去する。停戦2日目に作業を始め、2週間以内に終える日程を描く。
ただ、親ロ派幹部は16日、「まだ重火器を撤去できる状況ではない」と言明した。ポロシェンコ大統領も15日、重火器の撤去開始は全ての地域の停戦が前提と語っており、先行きは不透明だ。
撤去作業の監視は紛争当事者にとって中立的な欧州安保協力機構(OSCE)の要員が担う。ロシアメディアによると緩衝地帯はドネツク、ルガンスク両州の半分程度の広さになる見通し。およそ日本の長野、新潟両県を合わせた広大な地域が対象となる。
前線の一部では、なお小競り合いが続いているもよう。政府軍は16日、親ロ派が停戦発効後に112回にわたって攻撃を仕掛けてきたと非難した。親ロ派幹部も16日、政府軍が前日からドネツクなどで停戦違反を27回繰り返し、南東部の要衝マリウポリ郊外の戦闘では政府軍兵士1人が死亡したと主張した。
主要都市ドネツク北東の要衝デバリツェボでも市内の政府軍と包囲する親ロ派のにらみ合いが続いている。ウクライナメディアによると親ロ派は政府軍に投降を呼びかける一方、市内への砲撃を強めている。
ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国首脳は16日、前日に続いて電話協議し、停戦の完全履行に向けた方策を探る方針だ。