2008年の金融危機以来、銀行家のボーナスは政治家、規制当局、そして市民からの厳しい目にさらされてきた。そしてその圧力は効果をあげている。投資銀行の実質報酬は07年から40%減っているのだ。しかし金融業界の法外な報酬に懸念を持っている人々は、間違った方向に目を向けている可能性がある。
金融業界が厳しくなった自己資本要件や借入金をてこにした投資を減らすなどの対応を行ってきたことに併せて、投資銀行での賞与は圧縮されてきた。その一方で、資産運用会社で働く人々はひそかに恩恵を受けている。ある調査によると、16年までに資産運用担当者の平均報酬が投資銀行の銀行家のそれを上回る可能性があるという。10年前には半分をわずかに超える水準だったことを考えれば大きな上昇だ。
シンクタンクのニューフィナンシャルによると、資産運用会社での報酬は、増加基調にある運用資産に押し上げられている。それは、運用担当者の卓越した能力のおかげというよりは、どちらかと言えば資産運用業界の規模が拡大して手数料が増えたという方が当たっている。
■大きければ大きいほど増える手数料
このことは、規制当局者が巨大資産運用グループが金融システムにシステミックリスクをもたらすのではないかと関心を高めていることとも時を同じくする。また、なぜ資産運用担当者が規模から得られる利益を低い運用手数料という形で顧客に還元するのではなく、運用資産規模の純然たる大きさからそれほど手厚い恩恵を受けているのかという疑問が浮上する。
ヘッジファンドや資産運用会社の優位なキャリアや高額報酬の可能性に気づき、資産を売る側から買う側に転向する銀行家が増えている。ヘッジファンドの収益の大部分は運用成績に連動する手数料だが、業界のそのほかの運用会社は運用する資産から手数料を徴収している。運用資産が大きければ大きいほどもらえる手数料が増えるのだ。
アクティブ運用型のファンドは、手数料が低いインデックスファンドからの圧力にさらされている。したがって、運用形態の割合によって業界の手数料全体が縮小し、得られた運用益が資産運用担当者より投資家に多く還元されると期待するのは理にかなっている。