知人の暴力団関係者と共謀し、男性に覚醒剤を譲り渡したとして、覚せい剤取締法違反罪に問われた静岡県警の元巡査部長、横山彰一被告(40)に対し、静岡地裁は19日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役2年6月)の判決を言い渡した。大村陽一裁判官は判決理由で「摘発実績のためのおとり捜査。捜査機関が犯罪をつくり出しており、司法の信頼を害した」と指摘した。
覚醒剤を受け取った男性は所持容疑で逮捕、起訴されたが、静岡地検が昨年6月に「違法捜査の疑いが濃い」として、公訴取り消しを地裁に請求し、認められている。
県警監察課は「裁判所の判断にはコメントできない」としている。
判決によると、2014年4月12日、浜松市内で男性に覚醒剤0.1グラムを無償で譲り渡した。
地裁は、やりとりされたメールの内容から、横山被告と暴力団関係者との間に捜査費4万円で覚醒剤を購入し、男性に渡す謀議が成立していたと認定。横山被告が所属していた県警細江署刑事2係は13年以降、薬物事件の摘発実績がなく犯行に及ぶ動機があるとした。
横山被告は無実を訴え、弁護側も「4万円は情報提供への謝礼や交通費だった」と主張したが、地裁は「不合理で信頼できない」として退けた。
県警が昨年4月、暴力団関係者を恐喝容疑で逮捕。捜査で横山被告が覚醒剤の譲渡に関与していた疑いが判明した。暴力団関係者は覚せい剤取締法違反罪でも起訴され、懲役3年2月の判決を受けている。
横山被告は1993年に県警に採用され、12年から細江署で薬物事件の捜査を担当していた。〔共同〕