静岡県御殿場市の陸上自衛隊東富士演習場で2010年、野焼き作業中に男性3人が死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われた元東富士入会組合長の渡辺淳(76)と同組合事務局長の勝間田祐一(59)の両被告=いずれも同市=に対する判決が24日、静岡地裁沼津支部であった。斎藤千恵裁判長は渡辺被告に禁錮1年執行猶予3年(求刑禁錮1年)、勝間田被告に禁錮10カ月執行猶予3年(同10カ月)を言い渡した。
判決によると、野焼きは同年3月20日、同組合を含む4組合が実施し、地元住民らが参加。勝間田和之さん(当時37)、勝間田嘉弘さん(同33)、池谷慶市さん(同32)が、強風にあおられた火に巻かれて焼死した。渡辺被告は作業の総責任者、勝間田被告は統制本部の責任者だった。
争点は、両被告が今回の事故を予見できたか、対策をとる義務があったかという点だった。
斎藤裁判長は判決で、緊急時の避難場所となる「防火帯」の周知が不十分だったとし、「防火帯が具体的に明示されていなければ避難場所の判断を誤るおそれがあることは十分に予見できた」などと認定。さらに「作業員らの安全確保は、野焼きの主催者が負う最も基本的な注意義務」として、「(両被告が)安易に前例を踏襲し、安全確保に留意するよう抽象的に求めるだけで、具体的な事故防止対策は作業班など地元に丸投げしていた」と指摘した。
弁護側は「事故は突如発生した猛烈な風のためだ」などと予見可能性を否定。野焼きについて「3千ヘクタールの広大な地域で1千人超が実施する作業で、安全確保は現場作業班に委ねざるを得ない」とし、両被告の無罪を主張していた。両被告は即日控訴した。(常松鉄雄)