総選挙を5月に控え、英国の政党が競っているのは政策だけでない。より多くの選挙資金の確保も目指しているのだ。今回の総選挙はこれまでで最もお金がかかる争いになるかもしれない。保守党と労働党は今度も、それぞれの党を長く支えてきた財界と労働組合に期待している。独立機関である選挙委員会が19日に発表した報告書は、この二大政党に対する献金額の最新データを示す。両党が受け取った金額は2014年12月までの3カ月間に限っても約1300万ポンドにのぼる。
キャメロン英首相。保守党を率いる=ロイター
個人を含めた民間が大々的に大統領候補を支援する米国に比べると、英国の政党の資金集めは控えめな規模だ。それでも、英国のシステムには憂慮すべき点がある。主要な政党が必要なお金を確保するため、少数の提供者に頼る傾向がこれまでになく鮮明になっているからだ。こうした個人は、企業幹部だったり労組の実力者だったりするが、有力政治家に過度な影響力を行使する可能性がある。
これも独立機関である選挙改革協会が今週明らかにした報告書を参照すれば、大口献金者の顔ぶれがかなり絞り込まれていることがわかる。この10年間をみると、労働党が受け取った献金の4分の3超と保守党への献金の5割は、個人による5万ポンドを超える献金だった。ここ数年の勲章や貴族の称号をお金で買おうとするスキャンダルの核心にあるのは、こうした提供者が献金によって権力に近づこうとしているという疑惑だ。世論が疑念を強めれば、政治に対する信頼が損なわれても仕方がない。
■献金額に上限を設ける議論活発に
野党・労働党のミリバンド党首=ロイター
少数の提供者に献金を依存する割合が大きくなりつつあるいまの制度は、大衆の政治参加を阻害する。一般市民の多くはささやかな額の党費や寄付金を支払っても意味がない(政策に影響を及ぼせない)と考えるようになるからだ。長期の傾向として、主要政党が党員を大きく減らしてきた事実をみても驚きはない。保守党の党員は1950年代に250万人を超えたが、いまでは15万人強にすぎない。
各政党は何十年も前から、問題があると思っていた。保守党は労組が資金の源である場合に個人からの献金額に上限を設ける用意がある。一方、労働党は労組を対象から外す場合に限り、上限の設定を支持すると主張している。協議は常に物別れに終わってきた。