シャープの液晶ディスプレー「IGZO」の登録商標を無効とした特許庁の審決を不服として、同社が取り消しを求めた訴訟で、知的財産高裁は25日、請求を棄却する判決を言い渡した。IGZOは原材料の物質名で、設楽隆一裁判長は「特定企業による独占使用を認めることが公益上適当とはいえない」と判断した。敗訴したシャープ側は「上告を含めて適切に対処する」としている。
IGZOはインジウム、ガリウム、亜鉛、酸素の元素記号の頭文字をつなげた名称で、1995年から使用されてきた。科学技術振興機構が特許を持ち、シャープが利用許諾を受けて高性能な液晶ディスプレーの製造に利用。ブランドとしても活用し、2011年11月に商標登録した。
同機構は13年7月、多くのメーカーがIGZOに関する研究開発をしていたのに、シャープだけが商標として独占利用するのはおかしいなどとして、「商品の原材料を表示するのみの商標登録は認められない」との商標法の規定を根拠に特許庁に審判を申し立てた。同庁は14年3月、商標を無効とする審決を出し、シャープが取り消しを求めて提訴していた。
シャープ側は裁判で「IGZOの技術で商品を量産、販売しているのは当社だけで、宣伝・販促活動の結果、イメージが定着した」などと主張したが、設楽裁判長は「商標登録時には既にエレクトロニクス業界でインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物を意味する語として広く認識されていた」と指摘。
その上で、IGZOは電子デバイスの性能を向上させる材料として期待されており、多くの関係者が商標利用を求めるものだとして「特定企業の独占使用を認めることが公益上、適当ともいえない」と判断。商標法が認めない「原材料のみを表示する商標」に当たるとして、無効審決は妥当と結論付けた。
商標が無効とされても、シャープは独占利用できなくなるだけで、引き続き製品名などで使うことはできる。「イグゾー」など同社が別途持っている登録商標には今回の判決は影響しない。