野村証券社長に就く森田敏夫氏(野村ホールディングス提供)
野村ホールディングス(HD)は7日、グループ中核の野村証券の社長に、森田敏夫副社長(55)が昇格する人事を発表した。永井浩二社長(58)は代表権のない会長となる。4月1日付。永井氏は野村HDのグループCEO(最高経営責任者)を続けて、グループ統括に専念する。
野村HDではグループCEOと証券社長の兼務が続いていた。今後はグループ統括と経営の執行の役割分担を明確にする。森田氏は国内営業の経験が豊富で、2012年にHDの営業部門トップとなり、16年4月から国内の投資銀行部門を担当してきた。野村は森田氏の起用で、アベノミクス相場の勢いが弱まり、低調な国内事業の立て直しを進める。
野村の預かり資産は昨年9月末時点で約99兆円。12年以降で約1・5倍に増えた。アベノミクスの株高の効果が大きいが、最近は相場の乱高下もあって売買が低調で、国内営業は伸び悩む。グループの業績は持ち直しているが、人員削減などを進めた海外事業の復調の効果が大きい。
野村は他社と同様、売買手数料頼みではなく、預かり資産を増やし、運用による収益拡大を目指しているが、新たな顧客となる若年層はネット証券での取引が多い。現社長の永井氏は昨年末の朝日新聞の取材に、「相続が出た時に、次の世代の顧客をつなぎとめていくことが求められる」と述べていた。それを引き継ぐ森田氏が、営業での実績をどう生かすかが注目される。(神山純一)
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森田敏夫氏(もりた・としお) 同志社大商卒、85年野村証券に入り、専務などを経て16年4月から代表執行役副社長。55歳。