原油価格の急落を受け、韓国の造船企業が厳しいリストラ策の実施を余儀なくされている。海上掘削装置(リグ)の仕事の減少が利益をむしばみ、造船大手が未知の領域に追い込まれているからだ。
現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋――売上高で見た世界三大造船会社、いずれも韓国企業――は造船業界の不振が長引く中、受注の減少と競争の激化、労働争議の増加と奮闘している。
ドックに停泊する世界最大のコンテナ船「CSCLグローブ」。1万9000個のコンテナが積める容量を持つ。中国企業が所有するが韓国製だ=ロイター
これらの企業は石油・ガス関連の船舶の売り上げに守られ、2013年までは比較的堅調だった。だが、原油価格の下落が造船産業を厳しい状況に追い込んだ。世界の石油会社が設備投資を減らし、掘削船や海上生産設備の発注を延期、キャンセルしているためだ。
「三大プレーヤーは12~13年に海上プロジェクトの比重を急激に高め、そうした事業の割合が同期間中に最大62.5%に達した」。韓国投資証券(KIS)のアナリスト、イ・ギョンジャ氏はこう話す。「だが、建造の進捗によって運転資本と予算超過の懸念が高まる可能性があるため、海上プロジェクトには綿密な監視が必要になる」
■最も打撃受けた現代重工
原油価格の下落では造船大手の苦境を完全に説明することはできないとアナリストらは言う。韓国の造船会社は受注残高を増やすために海外の発電所や石油リグ、エネルギープラットフォームに過度に積極入札し、その結果、利幅の薄い受注案件が損益に打撃を与えている。
業界トップの現代重工は特に大きな打撃を受けた。同社は昨年、潜在的な損失に備えて引当金を設定したため、推定32億ドルの営業損失を計上した。昨年獲得した新規受注は198億ドルで、年間目標296億ドルの67%にとどまった。
「現代は過去数年間、業界の不振を乗り切るために非造船事業に急激に手を広げたが、そうした無謀な事業拡大のせいで今の苦境に陥った」と、野村証券のアナリスト、アンジェラ・ホン氏は言う。
同業他社も事業環境の悪化の影響を免れない。サムスン重工の営業利益は昨年、80%減少して1830億ウォン(1億6500万ドル、約197億5000万円)となった。一方、大宇造船の純利益は昨年1~9月期に60%近く減少して810億ウォンになった。
大手3社のうち、昨年の新規受注が最も少なかったのがサムスン重工で、受注額はわずか73億ドルと、150億ドルの目標額を大きく下回った。液化天然ガス(LNG)輸送船の強さのおかげで、唯一、145億ドルの年間受注目標を上回ったのが大宇造船だ。