政府は27日、九州旅客鉄道(JR九州)の完全民営化に向け、同社をJR会社法の適用対象から外す改正案を閣議決定した。収益力が高まり、上場後も安定的に経営できる環境が整ってきたと判断。実質的に国の管理下にある特殊会社から経営の自由度を高めた純粋な民間企業へ移行させる。
JR九州の全株式を持つ独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有株を一括売却し、2016年度中の株式上場をめざす。旧国鉄の分割・民営化で発足したJR会社の民営化は、1997年の東海に次ぐ4社目で約20年ぶりとなる。
JR会社法の適用を受けているJR九州は現在、代表取締役の選任や社債の募集、毎年度の事業計画で国土交通相の認可が必要だが、法改正によって機動的な経営ができるようになる。民営化で赤字路線を安易に廃止しないよう、国は路線の維持を求める指針で一定の歯止めをかける。
ローカル線を引き受ける代わりに渡された3877億円の経営安定基金は、財務体質の改善を目的に上場前の取り崩しを認める。閣議後の記者会見で太田昭宏国交相は「基金の活用で上場後も安定した経営ができるようになる」と語った。
具体的には、九州新幹線の設備を持つ鉄道・運輸機構への施設使用料を一括で前払いするほか、借入金の返済に充てられるようにする。財務基盤を強化すれば企業価値が高まり、高値での株式売却が見込めるようになるとの判断だ。市場では、同社の時価総額は5千億円前後との見方が多い。