【パリ=竹内康雄】北アフリカ・チュニジアの首都チュニスで18日に起きた博物館の襲撃事件で、日本人を含む少なくとも19人が死亡し、38人が負傷した。日本政府は19日午前、日本人3人が死亡し、3人が負傷したことを確認した。死亡した3人は女性との情報がある。犯人の一部は逃走したとみられ、チュニジア当局が行方を追っている。
チュニジアでは2011年、事実上の独裁制を敷いていたベンアリ政権が崩壊し、民主制に移行した。独裁政権下では軍の力が強く、治安は安定していたが、民主化に伴い犯罪が多発している。周辺のアルジェリアなどからイスラム過激派の流入も確認されている。今回の事件は北アフリカから中東にかけてテロのリスクが拡散している現状を改めて裏付けた。
菅義偉官房長官は19日午前の記者会見で、日本人の被害者の身元に関し「本人および家族の了解が得られていない。政府として発表することは控えたい」と語った。同時に「いずれの組織からも犯行声明は出ていない。犯人の組織・背景は不明で引き続き情報収集に努めている」と強調した。
犠牲になった日本人について19日昼、首相官邸で安倍晋三首相と会談した自民党の谷垣禎一幹事長は会談後「日本人の女性が亡くなったり、けがをしたりしている」と記者団に説明した。
インターネット上などでは過激派組織「イスラム国」の関連サイトが今回の犯行を称賛したとの情報もあり、イスラム過激派の関与した犯行との見方が出ている。チュニジアのシド首相は現場で射殺された2人はヤシン・ラアビディ、ハテム・ハシュナウィの両容疑者で、いずれもチュニジア人だと明らかにした。
事件は18日、チュニスにある国会議事堂や隣接するバルドー博物館で発生した。武装集団が観光客らを襲い、館内に立てこもった。
現地の報道などによると、一部の観光客はクルーズ船の乗客で、バスで博物館を訪れた際に銃撃を受けた。立てこもりは数時間続き、チュニジアの治安部隊が実行犯のうち2人を射殺した。ほかに実行犯がいたとみて当局が行方を追っている。治安部隊が応戦する様子や大勢の観光客が逃げ出す映像も流れている。
シド首相は18日夜のテレビ演説で、死亡者に日本人5人が含まれるとしていた。菅官房長官は記者会見で「誤認だ」と述べた。
一方、ロイター通信は犠牲者について17人の外国人観光客のほか、チュニジア人2人がいると伝えた。日本人のほかに、イタリア人4人、スペイン人2人、コロンビア人2人、フランス、ポーランド、オーストラリアのそれぞれ1人が犠牲になった。
チュニジア国内では犯行に衝撃が走っている。主力産業で経済を支える観光への影響は避けられず、シド首相は「許しがたい攻撃だ」と非難した。バルドー博物館は古代ローマ時代のモザイク画を多く所有し、北アフリカ有数の観光名所として知られる。