10月に始まる「医療事故調査制度」について、厚生労働省の検討会は20日、運用指針案を公表した。患者が亡くなった医療事故で事前に死亡の危険性を説明していたケースを除き、第三者機関へ報告するよう医療機関に求める。院内調査報告書を遺族に説明する際は「口頭または書面もしくは双方で、遺族が希望する方法で説明するよう努める」とするにとどめた。
指針案は意見公募を経て4月にも正式決定し、医療機関に周知する。
同制度は昨年6月の医療介護総合推進法の成立で創設が決定。診療行為に関わって患者が予期せずに死亡する事故があった場合、新設される第三者機関「医療事故調査・支援センター」への届け出と、院内調査の実施を全国約18万の医療機関に義務付ける。
指針案では▽医師が事前に患者や家族に死亡や死産が予期されると説明▽診療録に死亡リスクの記載があった――などのケース以外はセンターへの届け出対象になるとした。報告期限については事故発生後「遅滞なく」とし、具体的な日数は示さなかった。
医療機関が行う院内調査では、再発防止策まで「可能な限り検討することが望ましい」とした。
遺族への説明方法については「口頭または書面もしくはその双方」と3つの選択肢を挙げ、「適切な方法で行う」として医療機関の判断に委ねた。そのうえで「遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」とした。
遺族側は「口頭だけでは理解が困難」として書面での提供を求めていたが、医療者側の「裁判などの紛争に利用されて医師個人の責任追及につながりかねない」との反対意見を考慮し、努力義務にとどめた。
塩崎恭久厚労相は20日の閣議後の記者会見で、「医療現場での安全の意識が高まって、国民の医療への信頼がさらに高まるようにしてもらいたい」と述べた。