自民、公明両党は20日、自衛隊の海外活動を広げる新たな安全保障法制の骨格で合意した。集団的自衛権を使えるようにするのが柱で、米国など日本と密接な国が武力攻撃を受けた場合、「日本の存立が脅かされる」などの要件を満たせば、反撃して他国を防衛できるようにする。政府は具体的な法案づくりに入り、関連法案を5月中旬にも閣議決定する。
安全保障法制整備に関する与党協議会であいさつする自民党の高村副総裁(20日午後、衆院第2議員会館)
20日に国会内で開いた安保法制協議会でまとめ、座長の高村正彦自民党副総裁は協議後「現段階でできることは一応の決着をみた」と述べた。国会の事前承認のあり方など自衛隊派遣の歯止め策は詰め切れておらず、4月中旬に協議を再開し、政府が法案を閣議決定する5月中旬までに結論を急ぐ。
骨格では、公明党が求めた(1)国際法上の正当性(2)国会の関与などの民主的統制(3)自衛隊員の安全確保――の3原則を前提に「切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備する」としている。
集団的自衛権に関しては、昨年の閣議決定で定めた「密接な国への武力攻撃が生じ、日本の存立が脅かされる明白な危険がある」などの武力行使の新3要件に該当する事態を「新事態」とし、自衛隊が防衛出動して他国軍を防衛できるよう自衛隊法を改正する。
与党合意は3要件と、関連する国会質疑の内容を法案に「過不足なく盛りこむ」と明記。横畠裕介内閣法制局長官は国会答弁で「明白な危険」の判断基準として「攻撃国の意思、能力」「事態の発生場所」「規模、態様、推移」など5つの要素を例示しており、これらを法案に反映する。
他国軍に給油したり物資を提供したりする後方支援については、朝鮮半島有事を想定していた現行の周辺事態法を抜本的に改正する。地理的な制約とされていた「周辺事態」の概念を見直し、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすのであれば、日本周辺以外でも活動できるようにした。
これとは別に、日本の平和と安全に重大な影響がなくても、国際貢献を目的とした後方支援を可能にするため、いわゆる「恒久法」をつくる。インド洋での給油活動など必要が生じるたびに特別立法をつくっていた作業を不要にするためだ。国連の決議があることを条件とし、国会の事前承認を基本とすることも義務付けた。
人道復興支援活動は国連平和維持活動(PKO)以外の有志連合による復興支援などにも積極的に参加できるようにする。欧州連合(EU)のような地域的機関からの要請を念頭に、派遣の条件は「国連等」と幅をもたせた。これまで認めなかった治安維持の任務も可能にする。
グレーゾーンへの対応では、共同で警戒監視や訓練にあたる他国軍の艦船や航空機が武装集団に襲われた場合に自衛隊が防護できるようにする。現行法は自衛隊の防護の対象を自らの艦船などにとどめており、法改正でこれを広げる。
海外でテロなどに巻き込まれた日本人の安全確保はこれまで「輸送」にとどまっていたが「救出」もできるよう武器使用権限を見直す。自衛隊が不審船などの積み荷を確かめる「船舶検査」に関しては活動範囲を拡大。これまでは日本周辺で、日本に重大な影響を及ぼす事態のみ認められていたが、国際貢献を目的とする検査もできるようにする。