沖縄返還の際に日本側が必要経費を負担する「密約」があったことを認めた、元外務省アメリカ局長の吉野文六(よしの・ぶんろく)氏が29日午前9時10分、肺炎のため横浜市内の自宅で死去した。96歳だった。告別式は近親者のみで行う。喪主は長男、豊氏。
長野県松本市で生まれ、1941年に外務省に入省。同省アメリカ局長時代に、沖縄返還交渉を担当した。その後、外務審議官や駐独大使などを歴任した。
沖縄返還で米側が支払う米軍基地跡地の原状回復費を日本側が肩代わりするとの密約を一貫して否定していたが、2000年に存在を裏付ける米公文書が公開。06年に一転して存在を認めた。
09年には密約文書を巡る情報公開訴訟に証人として出廷した。