【イスタンブール支局】トルコ統計局は31日、2014年の実質国内総生産(GDP)伸び率が前年比2.9%増だったと発表した。輸出は伸びたが、内需の不振が響いた。13年の4.2%増を下回り、トルコ経済は足踏み状態にある。6月の総選挙に向け、政府が中銀への利下げ圧力を強める可能性もある。
トルコの潜在成長率は4~4.5%とされる。14年初めの政府成長率目標は4%だった。その後3.3%に下方修正したが、届かなかった。ただ、事前の市場予測は上回った。
不振の最大の原因はGDPの約7割を占める家計最終消費支出の伸びがわずか1.3%にとどまったことにある。最大都市のイスタンブールでは空き店舗を抱えるショッピングセンターも目立ち始めた。
内需を冷やしたのは内政の混乱と米国の利上げ観測に伴って起きた資金流出と通貨リラの下落だ。トルコの消費者は貯蓄率が低く、消費意欲が旺盛だ。消費を冷まして、輸入を減らし、経常収支を改善する必要から、トルコ中央銀行は14年1月に大幅利上げを実施、政府も増税やクレジットカードの与信規制などに動いた。
一方で、輸出はリラ安を追い風に6.8%増だった。輸入を差し引いた寄与度はプラス1.8ポイントに達し、内需の不振を部分的に補った。
産業別では、過去13年で最も深刻な干ばつに見舞われた農業部門がマイナス成長に陥ったほか、これまでに高い伸びを記録してきた建設部門も低調だった。
経済政策を仕切るババジャン副首相は31日、「グローバルな市場の変動、地政学的問題、悪天候によって成長が限定された」と語った。
15年の成長率を巡っては、政府目標の4%に対し、市場予測は3~3.5%にとどまる。足元では失業率、工業生産高、消費者信頼感指数といった主要経済指標が過去5年前後で最悪の水準に沈み、1~3月期は「成長率はゼロに近づくのではないか」(ブルガン証券のアスル・サブラノール氏)との指摘もある。
輸出を取り巻く環境も複雑だ。最大の輸出先である欧州市場では力強い回復は見込めない。輸出を増やしてきた中近東市場はシリアやイラクにおける紛争の拡大やリビアやエジプトなどとの外交関係の悪化が重荷だ。
トルコは6月に総選挙を控える。エルドアン大統領は憲法改正に必要な議席を確保し、自らが実権を持つ強力な大統領制の実現を目指している。
エルドアン氏は景気悪化の理由を高い政策金利に求め、2月末には「(国への)裏切り行為だ」との強い調子で中銀を非難。露骨な利下げ圧力もかけてきた。