政府が31日に閣議決定した首都直下地震対策の基本計画では、被害半減のために、木造住宅密集地などでの火災防止策と建物の耐震化に重点が置かれた。しかし、これまでも指摘されてきた課題をいかにクリアしていくか、目標達成の具体策は明確になっていないのが現実だ。
首都直下地震では火災による死者が全体の7割を占めるとされ、死者数半減を目指すには火災対策が不可欠となる。
今回改定された計画で木造住宅密集地における数値目標が示された「感震ブレーカー」は、電気器具などからの出火を防ぐ有効な対策として期待されている。
ただ、感震ブレーカーの設置率は「現状ではほぼゼロ」(内閣府の担当者)。認知不足や工事費負担が足かせとなり、今後実際にどこまで普及が進むかは未知数だ。
延焼の危険性が高い木造住宅密集地の解消は以前から防災上の課題となっているものの、土地建物の所有権が複雑で建て替えや移転はなかなか進んでいない。
計画では、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県にある「著しく危険な密集市街地」約2500ヘクタールについて2020年度までに100%解消に近づけるとされたが、「実現のハードルは高い」(同)。具体策として記載されたのは、避難路整備や建築物の不燃化など、「最低限の安全確保」の方策にとどまっている。
住宅の耐震化率も最新となる08年の全国推計では79%。国土交通省によると、近く13年分が公表されるが大幅な向上は見込めないという。
命を守るためとはいえ、費用のかかる耐震改修や建て替えに踏み切れない所有者も少なくない。自治体の多くは耐震改修費の補助を求めており、国交省の担当者は「財源の捻出が課題になる」と話している。