産業技術総合研究所と和光純薬工業(大阪市)の研究チームは、目的の細胞に育たずに腫瘍になる恐れのあるヒトのiPS細胞を取り除く試薬を開発した。培養液にたらすと不完全なiPS細胞がほぼ死滅する。大量に培養したiPS細胞も選別できるという。
再生医療でiPS細胞から作った細胞を患部に移植する場合、腫瘍になる細胞をいかに見分けて除去するかが課題となっていた。再生医療の安全性を高めると期待できる。医療現場での実用化を視野に、和光純薬が7月に試薬を発売する。
研究チームはiPS細胞の表面にある特定の物質に結合するレクチンというたんぱく質に、細胞死を引き起こす緑膿菌(りょくのうきん)の毒素をつけた試薬を作った。皮膚の細胞とヒトのiPS細胞を混ぜた培養液にこの試薬をたらすと、うまく育たなかったiPS細胞だけが24時間でほぼ死滅した。
試薬はiPS細胞の中だけに取り込まれ、他の細胞には影響しないという。産総研によると、実際に移植用細胞に試薬を使う際は、別の安全性試験が必要になるという。