【ワシントン=矢沢俊樹】米連邦準備理事会(FRB)が15日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、大半の地区で経済活動が拡大しているとした。製造業の一部で大幅なドル高や原油安が需要弱含みの原因になっているとも指摘した。米経済成長の勢いにやや陰りが生じている可能性をにじませた。
2月中旬から3月末までに各地区連銀があげてきた報告をまとめた。「大半の地域で拡大」とする総括判断は前回と変わらなかった。米製造業の需要が足元は「まちまちだ」とし、理由として厳冬、ドル高、原油安という3つの影響をあげた。
ドル高と原油安は、家計にプラスが大きい一方で、米エネルギー産業の投資手控えや輸出競争力への逆風になる。市場では天候要因も重なって消費がふるわず、1~3月期の米成長が鈍ったとの見方が広がっている。
FRBは28~29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ時期などを巡り協議を続ける。今回の連銀報告を踏まえて、米景気減速が一時的な現象か、低迷がやや長引きそうか慎重に判断する構えだ。
連銀報告を地区別にみると、リッチモンド(以下、連銀地区名)やシカゴなど5地区が経済活動は「穏やか」なペースで拡大したと報告した。クリーブランドやカンザスは「わずかな成長」「安定」とし、経済の伸びがほぼ横ばいにとどまったという。
分野別には、消費が大多数の地区で伸びが続いた。小売業者では石油の値下がりが消費を後押しした。個人消費の主力である自動車販売は大部分の地区で増えた。
住宅販売は大部分の地区で安定もしくは改善。集合住宅は強いが、商業用不動産市場は多くの地区で横ばいか、わずかな改善にとどまった。
労働市場は大部分の地区で安定またはゆっくりとした改善が続いている。複数の地区では原油安が原因で、製造業やエネルギー産業で一時解雇があった。賃金の上昇圧力は多くの地区で穏やか、もしくは緩やかだった。