65歳未満で発症した若年性認知症の人に対する厚生労働省研究班の生活実態調査で、就労経験がある約1400人のうち約8割が勤務先を自ら退職したり、解雇されたりしたと回答したことが21日までに、分かった。働き盛りで家計を支えていた人も含まれ、仕事を失った後の生活への不安は強い。
若年性認知症の発症年齢は平均51.3歳。症状には個人差があるが、早期に適切な治療を始めれば、進行を遅らせることができる場合もある。労働時間の短縮や配置転換など、仕事を続けるための配慮が十分とはいえず、企業側の意識改革が求められそうだ。
調査は国や大学と認知症の共同研究をしている認知症介護研究・研修大府センター(愛知県大府市)が2014年夏から年末にかけて実施。秋田、岐阜、大阪、香川など15府県の医療機関や介護、障害者施設に調査票を送り、18~64歳の認知症患者2129人について、施設担当者らから回答を得た。
就労経験があると確認できた1411人のうち、定年前に自ら退職したのは996人、解雇されたのは119人で、合わせて79%に上った。定年退職したのは135人だった。
さらに施設担当者とは別に、本人や家族から回答があった383人について詳細に分析。発症時に就労していたのは221人で、内訳は正社員・正職員120人、非常勤・パート40人など。221人のうち、その後に退職や解雇となったのは計約74%だった。約20%の人は労働時間の短縮や配置転換、通勤などの配慮が全くなかったと回答。中重度の要介護者が多く、現実的に就労が難しいケースがある一方、職場での配慮があれば、働き続けることができた可能性もある。
発症を境に世帯収入が「減った」のは約59%、家計が「とても苦しい」「やや苦しい」は計約40%で、今後の生活や経済状況について不安を感じている人は約75%に上った。〔共同〕