改正道交法による認知症対策
認知症対策を強化した改正道路交通法が12日に施行されます。免許更新時などに受ける認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された75歳以上のドライバーは、医師の診断が義務づけられます。認知症と診断されたら、公安委員会が免許取り消し(停止)処分をします。改正法の気になる点をQ&A形式でまとめました。
特集:介護とわたしたち
Q 医師の診断が必要となったら、受診の費用は誰が持つの?
A 受診する方法は、①公安委員会が指定する専門医の診断(臨時適性検査)②自分で選ぶかかりつけ医らの診断書の提出――の二通りあります。①は公費で全額が賄われます。一方、②は自己負担があります。厚生労働省によると、認知症の診療が必要と考えられる患者であれば公的医療保険の対象となります。75歳以上は原則1割負担になります。ただ、その場合も診断書の作成費用は保険対象外で、別途自己負担が必要になります。
Q 診断結果がでるまでは運転できるのだろうか。
A 改正道交法施行で認知症専門医がいる医療機関が混雑し、診断まで時間がかかることも考えられますが、結果がわかるまで免許は継続されます。更新も可能です。ただ、認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定されているので、警察庁は「運転に十分注意するよう要請する」としています。結果がでるまでに交通事故を起こしたら、一定期間、免許停止になる場合があります。
Q 診断が微妙なボーダーラインの人は?
A 「軽度の認知機能の低下」「境界状態」などと診断され、いまは認知症ではないが今後認知症になる恐れがある場合は、免許は更新(継続)できます。ただし、原則6カ月後に再び医師の診断が義務付けられます。
Q 診断による取り消し処分と自主返納との違いはあるの?
A 自主返納なら、金融機関などで身分証として使える運転経歴証明書の交付申請ができます。診断で取り消し処分を受けた人は申請できず、自治体などによる自主返納者への公共交通機関の利用料補助・割引、各種サービス割引などの特典も原則、使えません。認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された人が、警察や医師と相談して自主返納することはできます。
Q 医師の診断を受けなかったら?
A やむを得ない理由がないのに受診しなければ、免許の停止・取り消し処分を受けることになります。
Q 認知症の心配がある家族が運転を続けているといった免許に関する相談はどこにすればいい?
A 都道府県の免許センターなどにある運転適性相談窓口が相談先になります。警察庁によると、茨城・和歌山・熊本・鹿児島・大分・佐賀・長崎・宮崎・鳥取・香川の10県警では、相談窓口に看護師や保健師を配置し、専門職として面談にあたっています(2016年6月現在)。(編集委員・清川卓史)
■運転にあらわれる認知機能低下「早期発見チェックリスト30」
□車のキーや免許証などを探し回ることがある
□今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった
□トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった
□機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある
□道路標識の意味が思い出せないことがある
□スーパーなどの駐車場で自分の車を止めた位置が分からなくなることがある
□何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある
□運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある
□良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある
□車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある
□運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった
□アクセルとブレーキを間違えることがある
□曲がる際にウィンカーを出し忘れることがある
□反対車線を走ってしまった(走りそうになった)
□右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった
□気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある
□車間距離を一定に保つことが苦手になった
□高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった
□合流が怖く(苦手に)なった
□車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた
□駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を止めることが難しくなった
□日時を間違えて目的地に行くことが多くなった
□急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)
□交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった
□運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる
□好きだったドライブに行く回数が減った
□同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった
□以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった
□運転自体に興味がなくなった
□運転すると妙に疲れるようになった
五つ以上にチェックが入った人は要注意。専門医の受診検討を!
NPO法人「高齢者安全運転支援研究会」作成。鳥取大学医学部・浦上克哉教授監修