経済同友会の新しい代表幹事に27日、三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏(68)が正式就任した。小林氏は日本経済と社会の現状は「分岐点ではなく崖っぷちに立っている」と指摘し、危機感の共有を呼びかけた。財政やエネルギー、人口減問題などで安倍晋三政権への政策提言を強化する考えで、「これまでの延長線上には未来はない」と訴えた。
経済同友会の代表幹事に就任し、記者会見する三菱ケミカルホールディングスの小林会長(27日午後、東京都千代田区)
通常総会と理事会で、これまで4年間、代表幹事を務めた武田薬品工業会長の長谷川閑史氏(68)の退任と、小林氏の就任が決まった。小林氏の任期も2期4年で2019年4月まで。経営者ら約1400人を束ねる。
小林氏は総会であいさつし、初めての記者会見にのぞんだ。政府や会員企業に求める対応として「持続可能性」という文言を多用した。「我々は不都合な事実や問題から目をそらすことはできない」とし、財政や人口減少問題への対応は待ったなしだと強調した。政府が今夏にまとめる新しい財政健全化計画に、同友会としてどう関わるかが最初の関門になる。
このうち財政問題では膨張を続ける社会保障費への切り込みを求めたほか、「消費税率のさらなる引き上げが必須」と言及した。17年4月に予定する10%への引き上げ以降も追加の消費増税が避けられないとの立場を鮮明にした。同友会は今年1月に「17%まで段階的に引き上げるべきだ」との提言をまとめており、この主張を引き継ぐ。
安倍政権との関係を巡っては、いわゆるアベノミクスによって「(超円高など)6重苦といわれた状態が大きく改善された」と敬意を示した。ただ会見では「良い緊張感をもって進んでいきたい」と強調。「是々非々」の路線を採る。
政府内で30年時点での電源構成(ベストミックス)の議論が進むエネルギー問題では「火力発電に依存する仕組みは『慢性糖尿病』。温暖化を招き、世界は成り立たなくなる」などと指摘した。これまでの同友会の提言と同様に、原子力発電の比率を20%以上にすべきだと訴えた。