政府は8日午前、首相官邸で人身取引対策推進会議(議長・菅義偉官房長官)の初会合を開き、外国人の強制労働や売春の強要など人身取引の被害や取り締まりの状況を2014年の年次報告として初めてまとめた。
国連の人身取引議定書に基づいて認定した被害者数は前年より8人増え25人で、いずれも女性。うち18歳未満は7人だった。国籍別にみると日本が12人でフィリピンが10人で続いた。検挙者は33人だった。
人身取引議定書は「搾取の目的」で暴力などの強制力を使って「人を獲得、輸送、引き渡し、蔵匿、収受すること」としており、売春行為などが全て当てはまるわけではない。
議定書の人身取引に当たらない事案を含めると14年中の検挙数は、売春防止法違反535人、児童買春事犯587人、児童ポルノ事犯1380人。外国人の雇用事犯は雇用主やブローカー415人を検挙している。
年次報告は防止対策も紹介し、被害者となる外国人の旅券偽造に対応するための研修などを挙げた。外国人研修制度を使って劣悪な条件で就労させる事例があるとして、制度見直しの取り組みにも触れた。
年次報告は毎年公表し、20年の東京五輪などをにらみ、国際的な関心が高い人身取引の対策を強化する。菅長官は会議で「人身取引の根絶を目指して取り組みをお願いする」と述べた。