厚生労働省は21日の規制改革会議の作業部会で、大病院の目の前に集まる薬局が受け取る報酬を一段と減らす方針を示した。医師が出す処方箋を十分にチェックせず、過剰な投薬をしているケースが多いと判断。複数の病院の処方箋をまとめて扱い、飲み合わせの確認などに力を入れる「かかりつけ薬局」の報酬を積み増し、医療費の抑制につなげる。
規制改革会議が6月にまとめる答申に盛り込む。以前は医師が自ら薬を出すことが多かったが、過剰な投薬につながりやすいとして厚労省は調剤業務を外部の薬局に任せるよう促してきた。その結果、大きな病院の目の前に薬局が立ち並ぶことになり、「門前薬局」と呼ばれている。厚労省の調べでは全国の薬局の7割は、一つの病院の処方箋に頼った経営をしている。
厚労省は医師の処方箋をチェックして、過剰な投薬や危険な飲み合わせを防ぐ役割を薬局に期待している。門前薬局のなかにはこうした取り組みをおろそかにして、処方箋に基づいて機械的に薬を出しているところも多いとみている。
厚労省はこれまでも、医療サービスの公定価格にあたる診療報酬の見直しで門前薬局が受け取る収入を段階的に下げてきた。2014年度は一つの病院の処方箋が9割を超えている中堅薬局の収入を引き下げた。16年度以降の報酬改定でも一つの病院に頼った経営を続ける薬局の収入を段階的に下げる。
一方、複数の病院の処方箋をまとめて扱う「かかりつけ薬局」は16年度以降、段階的に収入を積み増す。具体的には24時間の対応、患者の自宅への訪問、飲み残し薬や飲み合わせの確認、安価な後発薬への切り替えなどに取り組む薬局の収入を増やす。病院の前にある門前薬局もこうした取り組みをすれば収入が減りにくくなる。
16年度の具体的な報酬額は厚労省の審議会で詰める。塩崎恭久厚労相は26日の経済財政諮問会議で25年までにかかりつけ薬局の普及を強く進める構想をつくると表明する。
門前薬局は大手の調剤チェーンが多いとされる。報酬の見直しが進めばビジネスモデルの転換を迫られる可能性がある。
患者が負担するのは薬局が受け取る報酬の原則3割だ。そのため門前薬局に行く患者は自己負担が減り、かかりつけ薬局では負担が増えることになる。ただ残りの7割は医療保険から支払われるため、「薬局の報酬の見直しで、患者の行動が大きく変わることはないのではないか」(厚労省)という。