気象庁は28日、昨年1年間の災害や気象観測の課題をまとめた「気象業務はいま2015」(気象白書)を発表した。今回は地震予知の可能性についても取り上げ「残念ながら実用的な手法は確立されていない」と現状を説明。地震を予知したとする雑誌の記事などに、科学的な根拠がないと苦言を呈した。
気象庁が異例の指摘をしたのは「質問箱」と題したコーナー。雑誌などが特定の地域を挙げ、地震が起きるとする記事などを掲載したり、気象庁に「うわさは本当か」といった問い合わせが寄せられたりすることから、疑問を解消したいとしている。
指摘の中では、「東日本のどこかで来年マグニチュード6の地震が起きる」など、解釈の余地が大きい複数の表現を例示。「場所や時期、規模のどれかを曖昧に扱えば、一見当たったように見えてしまう」と断じ、科学的な地震予知とは言えないとした。
また気象庁は、全国に地震計や地殻変動の観測機器を設置しているが、近代的なデータ収集の歴史はまだ数十年しかないことを説明。
国内で唯一、予知を目指して監視を続ける東海地震などでも、どの断層がいつずれるかといった点は分からないことが多いとし、予知の手法確立には「数多くの観測事例に基づく科学的な検証が必要」とした。
白書ではほかに、昨年8月に74人が死亡した広島市の土砂災害を特集し、積乱雲群が次々と発生する「バックビルディング」が形成され、線状降水帯ができたことを解説。63人が死亡や行方不明となった昨年9月の御嶽山噴火では、教訓を踏まえて火山観測態勢を強化し、噴火速報の創設を進めるなど情報提供の改善に取り組んでいることを紹介した。〔共同〕