尿検査で使用されている容器。2016年12月撮影=AP
2020年東京五輪・パラリンピックへ向けて、ドーピング検査員の不足が懸念されている。現時点では、想定する約500人の半分ほどしか確保を見通せていない。毎年募集を行っている日本アンチ・ドーピング機構(JADA)に加え、大会組織委員会も人材確保に動く方針だ。
スポーツ庁によると、大会中は国内の年間検査数と同規模の約5千~6千件の検査が想定される。約500人の検査員が必要となり、海外から約180人の応援が来る。だが、五輪のような大規模大会に対応できる経験豊富な検査員は国内に約70人しかいない。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)には、約300人の検査員登録者がいる。しかし、五輪の検査員は、抜き打ち検査や大会など2年間で8回以上の現場実績が必要となる見込みで、登録者であれば五輪に参加できるわけではない。その上、各検査員は別に仕事を持ち、休みを利用して活動している。20年時は長期休暇の取得が厳しい人や転勤して参加できない人も出てくる。JADAの浅川伸専務理事は「今夏に(登録者に)参加の気持ちを聞く調査をしたい」と話す。
JADAは例年通り、今年も4月1日から2カ月間、新規で約20人を募集する。22歳以上の男女が対象で、医学の知識や資格は求められない。だが、業務は早朝から深夜まで及んだり、抜き打ち検査で選手が不在の場合は選手宅前で1時間立ち続けたりすることもある。「検査スケジュールの急な変更もあり、関係各所と連携を取りながら対応するなど知力、体力ともに必要」とある女性検査員は言う。誰もが気軽に応募できる業務とはいえない。
こうした現状を受け、大会組織委員会も一般公募などを検討。19年の五輪プレ大会までに国内分の検査員数は確保したい考えだ。組織委の河野一郎・副会長は「大会時に現場で活動できる可能性の高い人に来てもらいたい」と話す。