「大阪都構想」の代案として自民党が提出した大阪府、大阪市、堺市の3首長と各議会議員で構成する「大阪戦略調整会議」(大阪会議)の設置条例が10日、大阪市議会で可決、成立した。大阪維新の会、公明党が賛成に転じ、大阪府、堺市の両議会でも成立する見通し。「ポスト都構想」の枠組みは固まったが、維新と攻守交代し、“かじ取り役”となる自民に困惑の声も広がっている。
橋下徹市長(維新代表)が提案した「府市連携局」の設置議案は自民など野党の反対で否決された。住民投票で否決された都構想の制度設計を担った法定協議会と事務局の大阪府市大都市局を廃止する議案も可決、大都市局は30日付で廃止される。5月大阪市議会は10日、閉会した。
新設する大阪会議は大阪府、大阪市、堺市の3自治体の首長と、各議会議員9人ずつの計30人で構成。昨年成立した改正地方自治法で、二重行政の解消を目的に全国の政令指定都市の市長と各道府県知事が協議する「調整会議」の設置が来年4月に義務付けられるが、先取りする形となる。
会長は委員の互選で選出。会議の議決は当初は過半数だったが、3自治体のうち2自治体の賛成多数で議決できないように、3自治体それぞれの出席委員の過半数の合意を必要とする修正案を自民が提出して成立した。首長と議会に対して大阪会議の決定事項を実現する努力義務も盛り込んだ。
設置条例案は自民が昨年9月議会で提出したが、自民以外の会派が「自治権の侵害で違法」などと批判。5月の住民投票で都構想案が否決されたことを受け、自民が5月議会に再提出していた。
自民以外の会派は当初は批判していたが、議会終盤の5日に維新が「都構想に代わる府市の連携策を進めるべきだ」と賛成に転換。公明も「人口が大きく異なる大阪市と堺市を含んで連携を協議するのは不適切」としていたが、公明との関係に配慮した自民が9日に議決方法などの修正案を示したため賛成に転じた。
ポスト都構想案の枠組みは固まったが、住民投票で自民などの攻勢の前に敗れた橋下氏は、成立した大阪会議については「制度として不完全極まりない。全く機能しない」と切り捨てる。
特に会議の委員数について「民間企業でも30人で役員会をする企業はない。意思決定機関を合理的にするのが今の流れで政治や行政が浮世離れしている象徴」と指摘。都構想案を否決に追い込んだ自民の提案のため「維新は付き合う」としながら、「一度やってもらったらいい」と“お手並み拝見”とばかりに突き放した。
一方の自民にも困惑する市議がいる。ある市議は賛成に転じた維新に「以前の激しい批判はなんだったのか」と憤り、「今回は継続審議で、9月議会に向けて批判された点を踏まえてブラッシュアップしていくつもりだった」と改革の主導権を早々に手渡されて戸惑う。
公明は「府市連携とは別に、経済成長など大阪全体の課題を話し合う場」とあくまで容認の立場を強調。大阪会議の議案は11日の府議会でも可決される見込み。堺市議会も3会派で過半数に達するため設置に必要な3議会全てで成立する見通しだが、先行きは見えない。