学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題をめぐり、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は16日の参院予算委員会の現地調査で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と証言した。首相側は即座に寄付を否定。自民、民進両党は、籠池氏の証人喚問を23日に衆参各院で行うことで合意した。
籠池氏、調査に「首相から100万円」 官房長官は否定
籠池氏の新証言で、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性が問われかねない事態になり、これまで参考人招致を拒んできた自民側が、うそをついた場合に偽証罪に問える証人喚問が必要と判断し、民進側に提案した。
籠池氏は大阪府豊中市の小学校建設現場を視察した参院予算委の与野党メンバーに対し、2015年9月に学園の幼稚園に講演に来た昭恵氏から「どうぞこれをお使い下さい。安倍晋三からです」と言われ、建設寄付金として100万円を手渡されたと証言。「名前は書いていないが、日付が入ったものはある」とも述べた。
これに対し、菅義偉官房長官は記者会見で、「首相に確認をしたところ、『自分では寄付はしていない。昭恵夫人、事務所等、第三者を通じても寄付していない』ということだった」と述べた。昭恵氏が個人として寄付したかどうかは確認しているという。首相も記者団に「官房長官から話があった通り」と語った。
新証言を受け、自民、公明両党の国会対策委員長は国会内で会談。「首相に対する侮辱だ」(自民の竹下亘国対委員長)として証人喚問に応じる考えで一致。竹下氏は民進の山井和則国対委員長と電話会談し、衆参それぞれの予算委員会で23日に証人喚問を行うことで合意した。17日に正式決定する。
国有地売却の不透明な経緯や政治家の関与が国会で議論となるなか、首相は「私や妻が(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」(2月17日の衆院予算委)と断言。籠池氏については「複数の中でお目にかかったかもしれないが、少人数ではない。個人的な関係は全くない」(同28日の参院予算委)と答弁していた。
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〈証人喚問〉 国会の国政調査権を定めた憲法62条に基づく制度。うそをついた場合は、議院証言法に基づき国会から告発され、偽証罪(3カ月以上10年以下の懲役)に問われる。正当な理由なく、出頭や証言を拒否しても禁錮刑や罰金を科せられる。
近年では、2012年4月にAIJ投資顧問による年金資産詐取事件の浅川和彦社長、07年10月に防衛汚職事件の守屋武昌・元防衛事務次官、05年12月に耐震偽装事件の元建築士らが喚問された。