選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が17日の参院本会議で成立し、来年夏の参院選から18、19歳が投票できる。選挙権年齢の変更は1945年の女性参政権以来70年ぶりで、日本政治にとって一つの転換点だ。若年層の声を生かす工夫がなされれば、政策決定に高齢者の意見が反映されやすい「シルバー民主主義」の行き過ぎに一石を投じる可能性がある。
施行後初めて公示する国政選挙から実施する。まず来夏の参院選で18歳選挙権が実現。その後、地方選挙に適用する。
18、19歳の未成年者約240万人が新たに有権者に加わる。全有権者のうち2%程度の割合にすぎないが、これをきっかけに若年層の選挙への関心が高まれば、低迷してきた投票率を底上げする可能性がある。2014年衆院選は投票率の最も高い60代が68.28%で、20代は32.58%にとどまった。
20歳で選挙権を得るこれまでの日本の仕組みは、世界を見渡すと主流ではない。欧米諸国は70年代に相次いで選挙権年齢をそれまでの20~21歳以上から18歳以上に引き下げている。米国の場合、ベトナム戦争で兵役につく若年層への見返りといった側面もあった。
いま日本が直面している少子高齢化という人口構造の問題は各国共通の悩みだ。各政党が掲げる政策も高齢者に利益をもたらす社会保障の重視に陥りがちで、財政事情は厳しいのに膨らむ社会保障費を抑えきれない。そんな状況は「シルバー民主主義」とも呼ばれる。
選挙権年齢引き下げはシルバー民主主義の行き過ぎを抑える手段の一つだ。オーストリアは07年、18歳以上だった選挙権年齢を16歳以上に引き下げるとともに、学校でも政治教育に力を入れた。13年の国政選挙の投票率は75%。若年層は全体より低いが、16~17歳は63%、18~20歳は59%だったという。
若年層の政治参加の拡大には被選挙権の議論も避けて通れない。被選挙権年齢は衆院議員や地方議員が25歳以上、参院議員や都道府県知事が30歳以上。国会審議では引き下げを検討すべきだとの指摘も相次いでいた。18歳選挙権を立案した与野党プロジェクトチームで今後、議論する。
「20歳以上」とする民法の成人年齢や「20歳未満」の少年法の適用年齢の引き下げも検討されている。民法改正案に関しては秋の臨時国会への提出が視野に入る。