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安保法案、どう向き合う 論戦巡り賛否の声

政府が今国会での成立を目指す安全保障関連法案を巡り、与野党が17日、党首討論で再び議論を戦わせた。法案の正当性を主張する安倍晋三首相に対し、「憲法違反だ」などと批判を強める野党。自衛隊の活動範囲を広げ、戦後安保の枠組みを大きく変える法案に国民はどう向き合うべきか。


■法案には、国際紛争に対処する他国軍の支援のために自衛隊の海外派遣を随時可能にする新たな恒久法も含まれる。


元海将の金田秀昭・岡崎研究所理事(69)は自衛権や自衛隊の位置付けが明確でなく、国際的地位にふさわしい責任を果たせない状況に疑問を感じてきた。「過去の海外派遣では特別措置法を制定するなどしてその都度対応してきた。法案は現行憲法下の議論に一つの決着をつけるもので、歴史的な一歩」と期待する。


初の海外派遣となった1991年の湾岸戦争では、海上幕僚監部で活動内容を検討する立場だった。「日本は巨額の資金援助をしたが、自衛隊の活動は停戦後の掃海部隊派遣にとどまった」ことがトラウマになっているという。法案が成立すれば「当時実現できなかった停戦前の掃海、護衛や邦人救出が可能になる意義は大きい」という。


■自衛隊の活動拡大で、戦闘に巻き込まれるリスクが高まることを懸念する意見は根強い。


外務省OBの宮家邦彦・立命館大客員教授(61)は、リスクに関する議論を「水掛け論」と断じた上で、「十分な訓練や装備、情報をもとにリスクを最小にするのが現実的だ」と強調する。


「安保は保険契約と同じ。コストをかけて平和を守るもの」という。「東シナ海や南シナ海で新たな脅威が台頭し、日米安保条約という古い保険だけでは対処できなくなった。『特約』が必要になった」


駐イラク公使だった2004年、邦人3人が武装勢力に拘束された人質事件への対応にあたった。「攻めてくる人間がいると思えば、抑止策を講じるのは当然。平和に恵まれた日本は抑止の大切さに対する認識が足りない」。法整備によって日米の連携に隙がなくなり、抑止力が高まるとみている。


■今月4日の衆院憲法審査会では与党推薦の1人を含む参考人の憲法学者3人が、法案を「違憲」とする認識を表明。波紋を広げた。


2004年から06年まで内閣法制局長官を務めた阪田雅裕弁護士(71)は「湾岸戦争やイラクへの自衛隊派遣時と違い、今回は憲法9条の解釈を変更するという『異質さ』への危機感が強まっている」とみる。


政府は従来の憲法解釈を見直して集団的自衛権の行使を限定的に認める閣議決定をしたが、「一内閣が恣意的に変えることは、立憲主義の観点から法治国家の根幹に関わる」。その上で「なぜ自衛隊が世界に出なければ、日本を守り切れなくなったのか。合理的理由を伴う解釈変更なら全く許されないわけではないが、今の政府の説明では不十分。具体的かつ明確に示すべきだ」と訴える。


■日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(5月)では、法案の今国会成立に「賛成」が25%、「反対」55%だった。


漫画家の倉田真由美さん(43)は日常生活を題材にした作品の執筆活動やメディア出演、子育てを通じ交友関係が広い。法案について「身近で話題に上ることは少ない」といい、自身も含め「断言できるほどの強い理由は無く、なんとなく賛成や反対という国民が多い」と感じている。


これまでの国会論戦では十分な判断材料が示されていないと感じている。「与野党とも相手を言い負かそうとしているだけ。良い点と悪い点を比較できる、バランスの取れた意見が聞きたい」。今国会での法整備を目指す政府の姿勢に対し「なぜ今必要なのかが伝わってこない。成立を急ぐスピード感が怖い」と首をかしげる。


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