【ワシントン=矢沢俊樹】米議会下院は18日の本会議で、環太平洋経済連携協定(TPP)妥結の前提となる米大統領貿易促進権限(TPA)法案について、賛成多数で再可決した。米上院も来週中に再採決に臨む方向が強まった。賛否は現時点で拮抗しているもようだ。7月のTPP大筋合意を目指してTPA問題を早期決着させたい野党・共和党と、慎重論が根強い与党・民主党との調整は大詰めの攻防を迎える。
議会下院は18日の本会議でTPA法案と、TPAと一括法案だった貿易調整援助(TAA)法案を分離して、TPA単独の法案を採決し直した。218対208の賛成多数で可決した。共和幹部らは下院での再可決後、断続的に上院での取り扱いなどを協議。来週中の上院再採決を探る動きが進んでいる。
オバマ大統領は失業者救済措置の延長を盛り込んだTAA法案とセットでないと、TPAにも署名しない考えを示していた。しかしここにきて、TAA法案の成立に一定の保証が得られれば、TPAに先行して署名・成立する可能性も示唆しているもよう。TPP合意を死守するため、柔軟に対応する姿勢に転じつつある。
米議会は27日から7月上旬まで10日間程度、一時休会する。共和幹部は休会明けに成立させるのでは7月中のTPP妥結に向けた交渉に間に合わないとみている。休会前に上院でも再可決し、すみやかにホワイトハウスに送って成立させたい意向だ。下院が18日に可決した内容と同じ法案ならば、再び下院に送り返す必要はない。
仮に共和のシナリオ通り来週中にTPA法案成立のメドが立てば、オバマ大統領に強力な通商交渉権限が委任されることになり、7月中のTPP合意をにらんだ機運が高まる公算が大きい。
ただ、上院の形勢はまだ流動的とみられる。5月22日にTPA・TAAの一括法案を上院で採決した際の投票結果は、賛成62対反対37だった。今回、TAAを切り離して再採決に臨んだ場合、一部の上院民主議員が反対に転じる可能性がある。一方、共和側からみると民主が支持するTAA法案が分離されたことでTPAに賛成しやすくなったとの見方があり、ある程度民主が寝返っても最終的に上院を通せるとの観測も強い。