【ワシントン=矢沢俊樹】米国と中国は25日、前日に閉幕した米中戦略・経済対話を踏まえ、経済分野の共同成果文書を発表した。原則としてすべての産業分野を対象とする2国間投資協定の締結交渉が「最優先」の懸案だと明記した。中国は証券分野の外資参入規制などを緩和する方針も打ち出した。
南シナ海問題などを巡る外交面の険しい対立とは裏腹に、経済分野は双方が「実利」を目指す構図が鮮明になっている。
今回の対話で米経済・金融界の強い関心を集めたのは、新たな投資の枠組み作りとなる2国間投資協定の進展度合いだ。この構想は原則として全産業の投資制限を撤廃し、例外的に規制を残す分野を調整する「ネガティブリスト方式」を採用する。文書は9月初めに両国がリストの改訂版を交換しあい、高水準の自由化を目指して交渉に臨むとした。
オバマ政権は同構想を環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加していない中国の市場をこじ開けるための最重要のテコと位置づける。9月に予定される習近平国家主席の訪米を成功に導きたい中国側も「かなり前向き」(米政府高官)という。各国も「米中投資協定交渉が予想外のテンポと深さで進み始めている」(日本政府筋)と警戒する。
経済の成果文書は中国の為替市場改革を筆頭に掲げた。「より市場で決定される為替相場システムへ、さらに迅速に行動する」と説明した。
マクロ経済政策は中国側が「安定的、かつ持続可能な成長に向け、家計の資産と収入を増やすため顕著なステップをとる」と踏み込んで公約した。米側は米連邦準備理事会(FRB)の利上げに対する不安が国際的に強まっている現状を踏まえ「透明性が高く、予測可能な方法」でFRBが慎重に金融政策のかじ取りをするとした。
金融市場改革を巡って中国側は、国内証券分野への資本参入規制の段階的緩和や、米銀などが上海にある経済特区で共同出資会社を設立しやすくするといった取り組みを列挙した。
文書によると情報・通信技術分野の規制の透明性を向上させることでも一致した。中国が自国の金融サービス分野の情報技術(IT)市場から「事実上、外資を締めだそうとした」(米当局者)ことに米側が猛反発し、中国が規制強化を見送った経緯がある。