日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス15だった。前回の3月調査(プラス12)から3ポイント改善した。改善は3四半期ぶりとなる。個人消費の底入れ感が広がり業況感を押し上げた。事業計画の前提となる15年度の想定為替レートは前回調査時点より円安方向に振れた。急ピッチの円安はコスト増加要因として意識される一方、輸出企業を中心に収益の改善期待につながった。
3カ月先については、大企業製造業がプラス16になる見通しだ。雇用・所得環境の改善基調が続いている。さらに米国を中心に世界経済が緩やかに回復していくとの見方から輸出や生産などが持ち直していくと見込む。
2015年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=115円62銭と、前回の111円81銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。回答期間は5月27日~6月30日で、今回の回答基準日は6月11日だった。
大企業非製造業のDIはプラス23と、前回から4ポイント改善した。改善は3四半期連続。雇用・所得環境の改善を受けて個人消費に底入れ感が広がった。訪日外国人観光客の増加などを背景に宿泊・飲食サービスなどが持ち直した。
3カ月先のDIは2ポイント悪化し、プラス21を見込む。円安などを背景にした物価上昇で消費が手控えられ、景況感が小幅に悪化する見通しだ。
中小企業は製造業が1ポイント悪化のゼロだった。非製造業は1ポイント改善のプラス4だった。先行きは製造業が横ばいのゼロ、非製造業は3ポイント悪化のプラス1だった。
15年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比9.3%増だった。3月調査の1.2%減から上方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(5.3%増)を大幅に上回った。
先行きの海外経済に回復の期待があり、過去最高水準にある企業収益を背景に、これまで先送りしていた設備更新や能力増強投資を再開する動きが出て増加の計画につながったようだ。大企業のうち製造業は18.7%増、非製造業は4.7%増を計画している。
大企業製造業の輸出売上高は前年度比2.8%増となり、3月調査から上方修正された。円安基調が続いていることで輸出企業が先行きについて強めの計画を設定したとみられる。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス4と、3月調査(マイナス6)から2ポイント、マイナス幅が縮小した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。円安などを背景にした輸入コストの増加分を価格転嫁する動きは、鈍さも残っている。〔日経QUICKニュース(NQN)〕