【ワシントン=吉野直也】米軍の統合参謀本部は1日、軍の運用指針となる国家軍事戦略を発表した。米国の安全保障を脅かす国家として中国などを挙げた。同戦略で中国を脅威と位置づけるのは初めてとみられる。日本など同盟国や、北大西洋条約機構(NATO)など多国間の枠組みで中国やロシアなどに対処する方針を明記した。
同戦略は2011年以来の改定となる。戦略ではまず「米国の安全保障を脅かす国家がある」と指摘。そのうえでロシア、イラン、北朝鮮、中国の順に列挙し、それぞれの国の具体的な脅威となる行動を明示した。中国については岩礁埋め立てが「アジア太平洋地域の緊張を高めている」「国際的なシーレーンにまたがった軍事力の配置を可能にする」などと断じた。
ロシアに関してはクリミア編入などウクライナ危機をあおっている現状を「地域の安全を損なっている」と批判。停戦合意など国際的な規範を無視する場合、追加制裁の準備ができていることを示唆した。北朝鮮は核・ミサイル開発が「韓国や日本など周辺国の直接的な脅威となっており、いずれ米本土をも脅かすことになるだろう」と予測した。
安全保障環境を巡る認識については「現時点で米国が他の大国との国家間戦争に巻き込まれる可能性は低い」としながらもその危険性は「増大している」として急激な変化に危機感を示した。今後は国家による脅威への対応能力を強化する必要性を訴えた。
中国の軍事費が増え続ける一方で、米国防費が削減されてきた実態を直視し、米軍の優位性は「侵食され始めた」と、その低下も認めた。その前提に立って「同盟国とのネットワーク強化への努力」を進める考えを強調した。
同盟国・友好国との協力拡大は日本のほか、オーストラリア、韓国、フィリピン、タイなどに言及した。アジア重視の継続と推進も打ち出した。