デンマークで新たに発足した中道右派政権は1日、移民に対する社会保障給付を半減することを発表し、移民排斥を唱える政党の創設者を国会議長に指名した。
デンマーク国民党の創設者で、スウェーデンの雑誌から「今年の人種差別主義者」に選ばれたこともあるクラスゴー党首が国会議長となる。閣外では最大の要職だ。
総選挙で第2党となったデンマーク国民党。グラスゴー党首(右)が国会議長に=ロイター
デンマーク国民党は6月の総選挙で第2党となったが、少数連立政権への参加は拒否した。単独政権となった自由党は、選挙では過去25年間で最低の結果に終わり第3党にとどまった。
■国境管理も強化
政権に閣外協力するデンマーク国民党は早くも閣僚への影響力を示し、一連の反移民政策を打ち出している。
政府は1日、今年9月以降の新規移民には社会保障を削減すると発表した。9月以降の移民は「統合給付」を受けるが、実態は給付はほぼ半減となる。例えば、単身者の移民に対する給付は月1万849クローネから5945クローネに、子どものいる夫婦は月2万8832クローネから1万6638クローネに減る。
シュトルベルク統合相は、「デンマークに押し寄せる難民申請者の波を抑えられるように制限を強める。これは政府が導入する一連の制限策の第1弾だ」と語った。
デンマークへの難民申請者数は2013年の7557人から昨年の1万4792人へとほぼ倍増したが、それでも昨年8万1301人を受け入れたスウェーデンには遠く及ばない。
デンマークの新政権は今週、国境管理の強化も打ち出した。欧州連合(EU)の外交関係者は、この動きに警戒の目を光らせている。2011年にはデンマークの中道右派連立政権が突如として国境管理を再開し、EUが非難する事態に至った。
イエンセン外相は、デンマークはEU域内の自由な移動に関するシェンゲン協定を順守するとしながらも、国境での警備と検査を強化すると語った。反移民を掲げるポピュリスト政党が政権を握るノルウェーも今週、国境管理の強化を発表した。
ラスムセン首相率いる新政権がどれだけ長く持つのか、政治アナリストの見方は割れている。国会の支持が弱く、デンマーク国民党が影響力の拡大にはやるなかで、ラスムセン首相は4年の任期を全うできないとする見方は多い。自由党は定数179の国会で34議席しか持っていない。
それでも、ラスムセン首相は社会民主党のトーニングシュミット前首相に倣い、左右両派を取り込む合意形成を目指せるという見方もある。
自由党とデンマーク国民党の考えが食い違う問題の一つにEUがある。ラスムセン首相は、現状は不参加のEUの司法・内務協力に参加するための国民投票を実施する考えだ。自由党と社会民主党の支持は得られるが、デンマーク国民党は反対している。
その一方で、ラスムセン首相とデンマーク国民党は、キャメロン英首相のEU改革の方針を支持する点で一致している。
by Richard Milne
(2015年7月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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