【上海=土居倫之】上海株式市場が官製相場の限界を露呈している。6日は中国政府が打ち出した大型の株価対策を受け急伸して始まったが、その後、一時下落に転じるなど投資家の弱気心理を変えられなかった。株価の調整が長引くようだと、中国の個人消費や企業の投資活動への打撃となり、国外への影響が広がる懸念もある。
中国政府は前週末、証券会社による1200億元(約2兆4000億円)以上の上場投資信託(ETF)購入、新規株式公開(IPO)認可社数の大幅削減、政府系金融持ち株会社による相場下支え策、空売りに対する厳正な処分など、なりふり構わない株価対策を矢継ぎ早に発表した。
これを受け6日の上海総合指数は前週末に比べ7.8%高の3975と急反発して始まったが、「下落のトレンドが終わったとは限らない」(中国の投資会社幹部)との見方が広がり、じりじりと上げ幅を縮小。後場に一時同0.9%安に沈む場面があった。終値は同2.4%高となった。
これまで株高を支えてきたはずの政府の株価対策が、今回は「不発」と受け止められたもようだ。6月半ばのピークから株価が約3割値下がりし、中国の個人投資家の心理が急速に弱気に傾いていることを示している。
株の取引で損失を被った個人投資家による自殺がメディアを騒がすなど、急激な株安は社会の安定に影響しかねない。
中国で株価指数先物を上場する中国金融先物取引所は6日、先物の新しい規制を導入すると発表した。先物の投機的な取引が相場下落を先導しているとの見方に対応する。具体的には顧客の1日当たりの先物売買数を一定の範囲内に制限する。
中国は金利や為替制度の自由化を目指している。だが株式市場が今後一段と下落すれば、習近平指導部が重視する社会の安定が揺らぐ恐れがある。中国経済の大きな課題である金融制度改革のスピードを遅らせる可能性もある。
▼上海株式市場 上海証券取引所が運営する中国の株式市場。上場企業数は1071社、株式時価総額は計約30兆元(約600兆円)。銀行や鉄鋼など大型国有企業が多い。原則中国人のみが投資できる人民元建てのA株と外国人も投資可能な米ドル建てB株の2種類がある。大半の上場企業はA株のみを発行している。