ホンダの八郷隆弘社長は6日、社長就任後初の記者会見を開き世界生産体制を見直す考えを示した。主要6地域が自立した生産・販売体制を敷くやり方を改め、日本から北米に小型車を輸出するなど車種を供給し合う。同社は世界販売600万台を目指してきたが販売力が追いつかない。規模を追う方針は白紙撤回し、商品力重視で「ホンダらしさ」を取り戻す。
記者会見するホンダの八郷隆弘社長(6日午前、東京都港区)
ホンダは世界を日本、中国、北米、アジア・太平洋など6極に分け各地域で個別の生産体制を敷いてきた。伊東孝紳前社長はそこに「2016年度に世界販売600万台」という目標を掲げ、各地域が競い合ってきた。
しかし生産拡大と販売がかみ合わない。ホンダの15年度の世界販売計画は472万台。これに対し生産能力は計画分を含めると100万台も上回る。急拡大が重荷となり主力車「フィット」の大規模リコール(回収・無償修理)にもつながった。
新体制の課題は当面2つ。世界で効率生産する体制と販売を底上げする「夢のあるクルマづくり」(八郷氏)だ。
効率生産では新車および部品の供給拠点として、稼働が低迷している日本と英国、タイの工場を使う。夏以降、欧米で販売する「フィット」「ジャズ」などの一部を日本から輸出する。英国産「シビック」は日米へ輸出、タイはナイジェリアで生産する「アコード」向けの部品を供給する。各地域で販売するクルマの1~2割程度を融通する仕組みにする。
新車開発でも挑戦が始まった。今秋に北米で発売する新型「シビック」は米オハイオ州の研究所が米国人好みのデザインにした。11年のモデル変更では有力誌に酷評されたため、現地の消費者の声を反映させた。
八郷社長が「ホンダらしさ」の例に挙げた4月発売の軽スポーツ車「S660」は20代技術者を開発責任者に抜てきした。効率生産と商品づくりの両輪を早期に軌道に乗せられるかが新体制のカギとなりそうだ。