台風18号の影響による関東・東北地方の水害の被災地では週明けの14日、決壊した堤防の補修工事や浸水家屋の後片付けなどが本格化した。「早く元の生活を」。被災者や関係者は復旧を急ぐが、被害はあまりに大きく生活再建の見通しは立っていない。警察などの捜索で同日までに新たに男性3人の死亡が確認され、一連の死者は計7人となった。
警察によると、茨城県常総市で布施政昭さん(51)と栗田要也さん(71)が死亡。栃木県栃木市では冠水した田畑に水没した車から同市に住む小倉治さん(68)の遺体が見つかった。常総市は依然として15人と連絡が取れず安否が分からないとしている。
栗田さんが発見された常総市三坂町の一部には鬼怒川の堤防決壊前に避難指示が出されていなかった。同市の高杉徹市長は13日の記者会見で「決壊は想定していなかった。われわれの予測では十分な対応ができなかった。大変申し訳なかった」と謝罪した。
三坂町では14日、決壊した鬼怒川の堤防の復旧作業が続いた。付近の県道は停電のため信号がつかず、早朝から土砂を運ぶトラックなどで渋滞。10台以上の重機や大型トラックが行き交う現場を出入りしていた工事関係者は「雨が降る前に少しでも早く復旧したい」と話した。
被災者は浸水した自宅の片付け作業に追われる。同市新石下で衣料品店を営む関上通代さん(74)は「営業再開はいつになるんだろう」と涙を浮かべた。親戚など10人がかりで12日から作業しているが、倉庫は水にぬれた在庫の衣類が山積み。「納品する予定だった商品もある。まだ先方に連絡ができていない」と焦った様子だった。
浸水して孤立していた常総市役所では罹災(りさい)証明や戸籍の届け出などの受け付けを開始。床に水が残る1階の総合受付には多くの市民が訪れた。同市中妻地区に住む女性(45)は住宅に散布する消毒液の配布を求めて足を運んだが入手できなかった。「ガソリン代だって惜しいのに無駄に車を往復させてしまった」と市役所を後にした。
線路の浸水などで全線で運休していた関東鉄道常総線は14日、下館―下妻間で本数を減らして運行を再開した。ただ、常総市内を含む大部分は不通のままで、市外の一部区間を走る代行バスも増便したが午前6時台の便から満員に。守谷駅前でバスを待っていた男子高校生(17)は「できるだけ早く復旧してもらいたい」と話した。