常総学院の宮本貴徳君=高橋雄大撮影
(18日、高校野球、秀岳館4―1常総学院)
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■常総学院・宮本貴徳選手
「甲子園に導かれた男」と仲間に呼ばれる。
なぜか。公式戦のベンチ入りが、甲子園でしかないからだ。今春とこの夏。選抜では代打で二ゴロに終わったが、打席にも立った。
7月28日朝。グラウンド脇のホワイトボードに甲子園メンバー17人が書き込まれていた。背番号13だけが空白。佐々木監督が言った。「投票で決める」
最後の1枠はチームに貢献し、最も必要とされる選手を部員が選ぶ。5年前に監督が就任して、導入された制度だ。白い紙切れに102人が名前を書き込んだ。
昼前、監督がマイクで告げた。「選ばれたのは宮本だ」。想像していなかった。茨城大会のメンバー4人も漏れていた。自分はそもそもベンチ外。「俺でいいのかな」。記録員の小林に相談すると、「おまえが一番頑張ってるって、みんな知ってるよ」。
練習の虫だ。冬場は小林を誘い、深夜3時まで室内練習場でバットを振った。1日だけの休みで東京の実家に帰っても、夕方には茨城に戻って練習した。2軍の主将として後輩に気配りもできる。だから、春の選抜でも、投票で選ばれた。
今度は実力で。その思いで打撃と内野の守備を磨いた。だが茨城大会でも届かず、裏方に回ろうと切り替えた直後だった。
この夏の4試合は他の部員の分も声を張った。出場機会はなし。それでも「一生忘れない景色だった。みんながくれた宝物です」。(岩佐友)