貧困や子育てに悩む家庭を支援しようと、福祉や教育などの専門家チームが自宅を訪問する取り組みを文部科学省が2016年度から全国で始める。ニーズに応じたきめ細かいアドバイスをしたり、行政の窓口を紹介したりする。文科省は「困窮する家庭を孤立させず、地域で支える体制をつくりたい」としている。
文科省は14~15年度、専門家チームによる訪問支援の実証研究を5つの自治体で実施した。16年度はモデル事業として、全国の約40自治体に拡大する。ほかの自治体が参考にできるよう、文科省内に設置した専門家会議で15年度中にマニュアルも作成する。
子供の不登校や虐待、貧困など、家庭が抱える問題は多岐にわたる。だが「日々の生活に精いっぱいで、誰にも相談できない家庭は多い」(同省生涯学習政策局の担当者)のが実情という。
専門家チームは福祉に詳しいスクールソーシャルワーカー(SSW)や臨床心理士、民生委員らで構成する。教育委員会や児童相談所などと情報共有して課題を抱える家庭を把握し、定期的に訪問することが特徴だ。
訪問の結果、健康面で改善すべき点が見つかった場合は保健所や医療機関に連絡。生活保護が必要であれば、福祉の担当者を紹介する。同局の担当者は「適切な行政サービスを伝え、問題が深刻になる前に解決につなげたい」と狙いを話す。
実証研究を実施した和歌山県湯浅町では、元教員や民生委員らでチームをつくり、現在は小中学生や未就学児がいる町内の約1千世帯を訪問している。保護者らのニーズを丁寧に把握した結果、子供の不登校が解消するなどの成果が上がっているという。
貧困など学校だけでは解決できない課題が増えていることなどを受け、政府は現在約2200人のSSWを19年度までに約1万人に増やし、全中学校区に配置する方針を打ち出している。